「ここ…が……?」



木造の家…

見てきた中では1番大きいと思う屋根の上には

木々が覆うように生い茂り、

空から見えにくいようになっていた…

――と言っても夜なので見えにくいのは元々だが…



「多分ここだと思…」



岳人が言いかけたところで廃墟…

家のドアがギィ…と開く…



「ああ、じゃあ俺は外を見張って……

 


!?……………ちゃん…?」

 



「…キ…ヨ……?」

 



「っちゃん!!」

 





千石はの下へ走って来ると

強く、抱き締めた…



ちゃんっ…

本当…心配したんだよっ!」


「ごっごめんね
///…と、キヨ苦し…///


「あっうん、ゴメンね…

それにしてもどうやってこの場所まで…」


「俺が連れて来たんだ!!

から離れろよ!!」



千石をから引き離したと同時に

また家のドアが開き

出てきた人物には目を見開いた…

 

 



「あっ…くん…?」

 

 




が名前を呼ぶと同時に

亜久津がの方を向き、

驚いたまま固まる



「………っ…
あっくーん!!!

やっと会えた〜
っ!!

私がいなくて寂しくなかった〜?

と言うか会いたかったー!!」




飛び込むように亜久津に抱き着いた

亜久津はふらつく事なく

を抱きとめる



「……っな!?
///離れっ…」


「亜久津…1番ちゃんの事心配してたもんね〜」


「てめっ
//


「大丈夫だよ!

怪我はかすり傷ぐらいだから♪」


「ぅんな事聞いてねぇ…

//っ〜〜一先ず離れろ!!」


「…あ!
おーい!

皆ぁーちゃんが来たよー!手塚君ー?」



「聞こえてる…無事でよかった…


「手塚部長…」


「どうやら俺の思った通りの時刻に着いたようだな、

一旦中へ入った方がいい…

作戦の説明をするから」


「乾先輩…はい、解りました。

行こうがっ君」


「ん?あぁ…。」



中へ入ると他の“仲間”が床に座り

入って来たを見上げた



「お前にしては遅ぇじゃねーか」


「跡部!?…こっちだって色々あったの!!」


「って言いながら顔が笑ってるぜ…?」



いつもの勝ち誇ったような笑みをみせながら

跡部はに言う



「だって……」



多分、まだ放送で知らされていない人以外

全員がこの場にいるなんて…



先輩!また会えて…本当に嬉しいです!!

あ、とりあえず座ってください、

立ったままではあれなんで…」


「チョタ!!…うん☆」



そう言って亜久津の右側には座った…


から見て右から

跡部、宍戸、鳳、手塚、乾、

菊丸、向日、千石、亜久津…と、

いう順に座っている


全員が座ったのを見ると手塚が話始めた



「では、達も揃ったところで

作戦の説明を始める…乾」


「ああ、昨日の夜…

やっと竜崎先生と連絡がついた。

先生は俺達の作戦に乗ってくれると…

手伝うという事だ。」


 


「おい、ちょっと待てよ」

 




跡部が乾の言葉を遮る



「いきなりお前等の所の顧問が

その作戦っつーやつを乗るっつっても

本当に信じられんのか?

あっちは政府の本拠地に居るんだぜ?

その連絡自体が全部漏れてる可能性だってあるし

その顧問が政府側だって可能性は

十分にあるじゃねぇか。

そんな奴を信じて俺達の命を預けろって言うのか?」



不満そうに言った跡部に他の者も頷く…

手塚も一度頷くと、口を開いた



「不満があるのも解る。

実際問題、こちらも、テニス部顧問だったと言うだけで

竜崎先生を信じきっているわけではない。

さっき跡部が言った事も十分にありうる事だ。

しかし…俺達が生きてこの島を出る為には

竜崎先生の助けが絶対条件だ…

例えそれが、
政府の罠だったとしても、

俺達に、これ以外の選択肢はない。」


「……そーかよ……解った、話を続けろ」



「………そして今日…。

竜崎先生から俺のノートパソコンの方にメールが届いた…




ただ、そのメールは一通ではない。」






「…どういう…意味ですか?」


「……その言葉の通り、

二通、“
竜崎先生”からメールがメールが届いたんだ」


「それは…つまり…

どちらかが
本物でどちらかが偽者って…

事…だよな?」


「そういう事になる…」


「乾先輩…それじゃあ…

その二つの作戦を…」


「どちらか選ばなくてはならない。」



乾の言葉にその場が静まる…


本物と偽者…


どちらかが天国でどちらかが地獄…



いや、もっと考えれば

もしかしたらどちらも地獄行きかもしれない。






それでも…




「手塚部長…

両方が地獄行きの切符であったとしても…

どちらかを選ばなきゃ

私達には…生きる方法がないんですよね…」


「…あぁ…」


「………どうやって決めるんですか?」


「…俺達が勝手にだが、

考えた方法が一つある…」


「多数決…ですか?」


「いや……

 



。お前に決めてもらおうと思う。」

 

 

 

 



「………わた…し…?

 

 

 


……っそんなのダメです!!

私独断の考えで皆の命を賭けるなんて!!!」


「いいんだ。

お前だからここに居る全員、納得する。」


「そんな事っ!」


「おい。」



反論しようとするの言葉を遮ると

亜久津は溜息交じりで言った



「いいんじゃねーのか…

こいつ等がテメェに選んでほしいっつってんだからよ」


「でも!!!」


「テメェはこいつ等にとって

自分の命を賭けられる程の

モノがあるっつってんだよ。」


「モノ…?」


「そーだよちゃん♪」



そして千石がつけたす様に言う



「それに、皆きっとそれを望んでる…

ちゃんには荷が重いかもしれないけど…

それでも、それがここに居る皆の願いなんだよ」


「皆の…願い…」



顔を上げ、全員の顔を見回すと

それぞれ、に頷いた…



「皆……」


「選んで…くれるか?」


「………はい、解りました…

私が、皆の代わりに選びます」


「すまない…」


「いいんですよ☆

…それが、皆の願いなら…

…それで、メールの内容は…?」


「ああ、読み上げる。


まず、1枚目の内容がこれだ…



『これから伝える作戦は非常に危険で、

それをするかどうかはお前達が決めるんだ。


作戦は、単刀直入に言えばここ、学校に潜入してほしい。

理由は二つあ る、一つはお前達が潜入した事で基地内が混乱し、隙ができる。

わしがその内にコンピューターにウィルスを流し込む事で

少なからず、錯乱できるじゃろう。

二つ目は基地の地下に食料などが入っている船が一つある。

それに乗って脱出してほしい。

危険な事というのは解ってるがこれ以外に手段がない。

制限時間は今日が終わるまで。

時間と同時に基地に仕掛けた爆弾が爆発し、

お前達の首に付いている爆弾も爆発する。

もしやってくれると言うのなら

お前達がいる廃墟の床下にバイクが数台隠してあるはずだ、

それで学校まで来るといい。



幸運を、祈っておる。』




…というものだ。」


「…つまり、学校に攻め込む形ですね…。」


「これが本当であれば、

危険度はとても高いが、

上手くいけば海で過ごす為の食料も手に入る。

海でしばらく過ごすには

必要な物が全て揃っている事になる。


ただ、無事に全員船までたどり着けるかどうかは…

俺にも解らない…。」


「……………。

嘘であれば…」


「………逃げ場は無く、

全員確実に捕まるだろう。

少なくとも、今回のゲームに……

優勝者は居ない事になる。」


「……………。

解りました。

もう一つの方…お願いします。」


「…二枚目を読み上げる…

内容は…

 

 

『作戦の内容は危険だが

お前達ならやれるじゃろうと願って

この作戦を教える。


わしがする事は2つのウィルスを投入すること。

1つは、わしが指定時刻に本部内で

お前達を監視する様々な監視システムを

一時的だが全て混乱させるウィルスを発生させる。

一時的と言っても、ここの政府がそのウィルスに対応できるまでじゃ、

そう速いわけではない。

少なくとも2、30分は確実に時間を奪える。

その間に、学校――基地から東側にある

沿岸の洞窟に中型の船が止めてある。

それを見つけ、脱出してほしい。


ただ、その船付近には勿論の事

政府のやつらが見張っているだろうし

気付かれれば、その区域を危険区域に指定される恐れもある。

しかし、もし30分きったとしても大丈夫じゃ。

ここで2つ目のウィルスが発生する。

この2つ目のウィルスは、

1つ目のウィルスに隠されていたもので、

1つ目のウィルスが破られると

自動的に2つ目のウィルスが発生するようになっておる。

これでプラス30分と考え、合わせて60分の時間は取れる。

けれど、これは厭くまでも予想…仮定じゃ。

これ以上の時間になるかもしれんし

これより少なくなる可能性もある。

それを承知の上で、この作戦を遂行するかどうか

それはお前達の判断で決めてほしい。


わしからは以上じゃ。


健闘を祈る。』



…というものだ。」

 

「…さっきとは逆に、

学校から離れて脱出する方ですね。」


「こちらはそれこそ時間との勝負になる。

しかし、追いつかれたり、

情報が漏れたりしない限りは

俺達の命の危険性は

1つ目よりは確実に安全だ。



「…でも、もしこれが罠なら…」



「…俺達の行動パターンが読まれている事になり

追い詰められる――

もしくは待ち伏せされている可能性は大きい。

さらに、先生の言う“船”自体、

実際にあるかどうか…

まぁ、これは1つ目の方でも言える事だが。」


「どちらにせよ、

本当であれば脱出できる可能性があって、

嘘であれば……」




その言葉に全員が口を閉じる…


言わなくとも、

言われなくとも、

その続きは解っている。


シン――と静まり返った空間で

は小さく深呼吸をした。



「(これで…私の答え一つで

皆の運命が決まる…。

死ぬか…生き残れるか…

やってみなければ、どうなるかなんて解らないけど…。)


……すみません、そのメール…

もう一度見せてもらってもいいですか?」


「……ああ。」



手渡されたノートパソコンに目を移す…



「(…どちらかが真実で…

…どちらかが偽り…

どちらも疑える所はあるし、

解らない所もある…




1枚目の方の一番の疑問は…



ここに隠してあるバイク…。


先生は…どうしてここにあるバイクの存在を知っているんだろう…

いや、それ以前になんでこんな所にバイクが…?

しかも数台はある。

こんな森が広がっている所では

バイクで走るなんて事はしようとしないし

ゲーム中じゃバイクの音で気付かれて

殺される可能性があるのに…。


誰かが見つけたところで使えるのは…

バイクの部品とガソリン。

武器として使うとしても……

そこまで有力な手段じゃない。


それとも、前のゲームで使われた…とか?

でも、実地条件は変わらないはず。

だっから、あっても意味がない。


それか、先生が前もってここに隠しておいた?

……だとしたら、政府に見付からないように、

どうやって一人でここに運び込んだの?

もしかしたら一人じゃなくて他にも誰か……。

 


ダメ…どう考えても私じゃ解らない…。

きっと、皆に聞いても同じ所で解らなくなると思う…。




じゃあ、2枚目の方は…?

こっちは……あんまりおかしな所はない…けど…


――ん?船が……



そう、船がなんでこんな所に?

下手したら誰かが見付けるかもしれないのに…

それに、まだ危険区域でもない。

普通、そんな所に船を隠すなら

一番初めの段階で既に

危険区域に指定されてなきゃおかしいんじゃ…?

いくら政府に武器があるとしても

こっちにだって支給されている武器がある。

私なら、万が一の事を考えて

一番初めに指定するけど……。


あぁ…また解らなくなった…。


どっちも“疑える”トコがある…

もしかしたら、本当にどっちも――

ううん、そんな事ない。

どちらかを信じなきゃ…

信じて決めなきゃ…

自分の為に……



皆の為に……)」

 



顔を上げ、閉じていた口を開ける…



「決めました」



自分の言葉に全員が目を向ける



考えれば考えるほど信じれなくなる…



でも、信じなきゃ前へは進めないから…

 

 

「私が選んだのは―――」








 

 

 


 

 

 

 

 





「一枚目の方の作戦です」        「二枚目の方の作戦です」