「一枚目の方の作戦です。」


 

 


「一応、それを選んだ理由を聞いてもいいか?」


「……は…い。

一枚目の作戦は…とても危険で…

本拠地に乗り込むのだから

全員が無事に脱出できる確立は…

本当に…限りなく少ないです。


それに、先生が何故ここにバイクがある事を知っているのか?とか…

二枚目の方が安全だとか…

私自身、そう思ったんです…。

実際、二枚目の方が安全だし…。


でも、でも本当の事を言ってしまえば…

これを選らんだのは、

脱出した後の事を考えて選んだだけで、

それ以外の根拠なんてなくて…

明らかにこっちの方が危険なのは解っているのに

何故か…何故か、内容を聞いた時…

“先生だ”って…そう…思って…

殆ど直感で………

皆の命……預かってるのに…っ

そんな理由…でっ……」




本当に…なにを言っているんだろう…


選んだ根拠も理由も…全然なくて…


“直感”だなんてバカらしい…


自分のそんな理由で皆の運命を決めるなんて…


運命が決まるなんて…


…そんなの…




「全員、反論はないな?」



「!?」




手塚の言葉には顔を上げる




「っま…待ってください!」


「どうかしたか?」


「こ…こんな根拠もなんにも無い理由で…

皆に反論ないわけっ……」



「……周りを見てみろ」



「え…?」



「全員の顔を見てみれば解る。」



恐る恐る言われたとおり周りを見回す…


けれど、誰一人、不満気な顔をしている者は居なく…



「決めた理由を、

「絶対間違えていない」という

その根拠をつけて説明しろと言われても、

ここに居る誰一人、それを説明できる者はいない。」



「……でも…あんな理由…で……」



「どんな理由であれ、

俺達はお前の決めた事に反論はない。」


「だって…っ」



まだ何か言おうとするの頭を

亜久津は上から手で押す



「テメェが決めたんだろ。

グチャグチャ言ってねぇで

胸張ってりゃあ言いっつってんだよ。」


「そーそー☆

これを決断するのは、

とっても勇気が必要だって事、皆解ってるからさ。

だから…ありがとう、決めてくれて…」



そう優しく微笑んだ千石と

同じく頷くほかの皆に

小さく…も頷くと、俯き…




「………っ…う…ん…」




か細い声で…答えた。





「…よし…用意は出来ている!

全員廃墟裏に集まれ!!」



『はい!(ああ!)』




手塚の言葉で全員廃墟裏へと行く…

するとバイクが五台立ててあり…

どうやら二人乗り専用のようだ



「ここで二人ずつに分かれてもらう…

誰か希望はあるか…?」



と手塚が言った瞬間ほぼ同時に

そこに居た殆どがへと目を向ける…



「……へ?…わ、私!?」


「これは決めようがないから

が決めた方がいいんじゃないのか?」


「乾先輩…誰でもいいんですか?」


が好きに決めればいい、

それなら全員文句はないだろうしな」


「あ、じゃああっくんで」



『ぇえ!?(迷いもせずに!?)』



「あっくーん!いーいー?」


「勝手にしろ…」


「ワーイ♪」


は亜久津か…

…では、あとはこっちで決める!

…俺と乾…跡部と…」



手塚がペアを読み上げている時に、

千石が亜久津の元へ来る



ちゃんと一緒になれて良かったね☆」


「知るか
//

……テメェはどうなんだよ…」


「ん?あぁ、どうしてちゃんと一緒に乗る事

希望しなかったかって事?」



聞き返すと亜久津は視線で返事をする



「そーだなぁー…二人といれば解るよ、

ちゃんなら、

絶対に亜久津選ぶだろうなぁ…って思って、

あの輪に加わる必要がないと思っただけだよ☆」


「……そうかよ…」


「あ!でも諦めたわけじゃないからね!!

いつでもどこでも狙ってるよ☆」


「勝手にやってろ」



そう言ってスタスタと歩いていく亜久津に



「あっ待ってよー!!!」



千石が慌てて追い掛けると、

ちょうどペア決めとその操縦の仕方が終わったようだ



「あ☆あっくーん!」


「あ?何だよ…」


「私が操縦するね☆」


「……………は?」


「だーかーらー!

バイク、私が操縦するね☆」



「……何……言ってんだテメェ……」



亜久津の顔が引き攣る…



「今ね!今ね!

やり方教わったから私でも操縦出来るのー♪

だから、ね?」


「やめろ……作戦より危険だ……」


「えー――…ちぇっ…

じゃあいいもーん、あっくんの背中堪能してやる」


「変な事すんじゃねぇ!!
//

 


「あ☆菊丸君だよね、僕とペア組むの」


「あ!千石!!そうだよー☆」


「アハハ、よろしくね♪」


「ヨロシク♪……それにしても…

…ニャーんかあそこだけ緊張感がにゃいようなぁー……」


「あー…あれは仕方ないから気にしない方がいいよ、

いつもの事だから」


「ふー―ん…」


「おーい!ちゃーん!!亜久津ー!!

そろそろ行くよー!!」


「はー―い♪」


「……………」



千石に呼ばれ、

と何だかげっそりしている亜久津はバイクの元へ行く



「先頭は俺達が行く、

跡部達はその後ろを着いてきてくれ」



そう言うとそれぞれバイクに乗る…

と亜久津は後ろから二番目で

その後ろに千石達、前に宍戸、鳳のバイクがあった



「ムー…やってみたかったのになぁ…」


「………やめろ…」


「でもあっくんだって実際乗った事ないでしょ?」


「それでもテメェよりマシだ。

…それよりしっかり捕まってろ…

落ちてもしらねぇぞ」


「はぁーい」



そう言って立ったまま亜久津の首に手を回す



「っな!?座って捕まれバカ!!
///


「え〜〜なんでー?」


「いいから座れ!!
///


ちゃーん、一先ずスカートって事考えてー!

それとそうやってやると調度よく肩らへんに

胸が当たるから亜久津落ち着けないってー」



と、後ろから千石がに教える



「そっかぁ…んー…じゃあしょうがないなぁ〜…よっと…」



素直に座り、亜久津の腰に手を回し直す



「案外素直に聞くんだね、ちゃん」


「いやぁ〜事故られたら困るし〜」


「あ、そういう理由」


「うん、そういう理由」


「出発するぞ!!」


「はーい☆」


『(本当に緊張感のかけらもない…汗)』



手塚達を先頭にバイクを走らせる…


足場が悪く木が多い為、

あまりスピードは出せない…

は亜久津の背中に頭を寄せ、

静かに目を閉じた…

 

 

 

 

 



聞こえてくるのは段差や石などが

バイクのタイヤで弾かれ、踏まれ、

ガタガタと車体を揺らす音と風を斬る音…

 

 

 

 

 

 

 

 

 



…明るく振る舞ってたって…



本当は恐くてしょうがないのに…





この三日間…

心の奥底にはいつも不安があった…



あっくんにも言ってないけど…

実際は何度も死体を見掛けた…


洞窟から移動している間にも…

足しか見なかったけど、

誰か倒れていたのを知ってる…


リョーマ君に会った時…

正直言って恐かった…


不安だった…


大切な、信じられる仲間だった筈なのに…


信じられなくて……



侑士に会った時なんて…


心が…壊れてしまうのかと…


目の前で苦しんでいる大切な仲間を…


友達を…

 


親友を…

 


何一つ助ける事のできない私は…


ここで生きている価値なんて…


本当はないんじゃないかって…



がっ君と移動している間だって…

もしかしたら、がっ君の言ってる事は

なんじゃないかって…

これは
なんじゃないかって…


口では“信じてる”って言ってる私が

心では全く逆の事を思ってる自分に…

殺してしまいたいぐらいに嫌いになって…

 



それでも…



また、あっくんに会えた時…

嬉しくて…




安心して…




泣きそうになって…




本当は…泣いてしまいたかった…



けど…



…零れる前にあっくんに抱き着いて、


涙を拭いて、


平然を保とうとした…



自分は平気だと…隠そうとした…



それでも…何となく気付いてる…



あっくん、そうゆうの鋭いから…



 


きっと、気付いてると思う……

 

 

 

 

 

 

 



気付いて……くれてるかなぁ…



 

 

 

 

…私が…弱い事…

 

 

 

 



  ねぇ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





「……あっくん…」

 

 

 

 

 

 

 




 「…何だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 





「……………え?」

 


「“え?”じゃねぇ…

テメェが呼んだんだろぅが」


「う…ん……

そう…だけど……」



風の音で掻き消されて

聞こえないと思ってた…



「……う…ん…」


「………何不安そうな顔してんだよ」


「………え……?」


「……廃墟で俺に会ってから…

テメェの声震えてんのが気になんだよ…」

 



……気付いていて……くれた……?

 

 

 



「なんかあんならさっさと言え…

…テメェの所為でこっちの調子が狂う」


「…………っ…」

 





あぁ…そうだった…

 

 

 

 


いつもそうだったよね…

 

 

 

 



 

 


ね、知ってる?


 

 

 

 

 

 



…私が…隠そうとしてる事…

 

 

 

 

 

 

 

 




いつも、誰よりも先に気付いてくれたの…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





あっくんだけだよ…

 

 

 

 

 

 

 






「…っえへへ
//



「……んだよ…」


「んーん♪なんでもない☆



ありがとう…
//

 



そう言いって

亜久津の背中にもう一度頭を寄せ、


また、目を閉じると…

 

 


嬉しさで緩む口元を隠すように下を向いた……