「二枚目の方の作戦です。」


 

 


「一応、それを選んだ理由を聞いてもいいか?」


「……はい。

時間の制限があるのは難しいところですが

先生の言う事が本当なら、

こちらの作戦の方が

全員で生存できる確率が高いと思いますし…


それに、まだ少し疑問などはありますけど

もし、何かあっても

逃げれる可能性も高いので

少なくとも…一枚目の作戦よりは

こっちの作戦の方が…何かしら対応がきくかと思って

私は…こっちを選んだんですけど……」


「なるべく危険じゃない方で…か。

らしい考え方だ。」


「ただ……」


「どうかしたのか?」


「どちらもそうなんですけど…

先生の言う“船”がどこにあるのか…

唐突に東と言われても

探すのに時間が掛かってしまう可能性が…」


「それなら大丈夫だ」


「竜崎先生から地図での場所を教えてもらった」


「それで、だ。

作戦内容で解るように…チャンスは一回だ。

ウィルスが発生している間は

この首の爆弾も起動しないし

位置もつかめないようになる…

その間に海岸に止めてある船まで行って

この島から脱出する事になる。」


「…なぁ」



宍戸が呟くように言う



「この島を出てから爆弾は爆発しないのか?」



その発言に全員息を飲み乾の返答を待つ…



「それは大丈夫だ…

ウィルスでその機能も破壊できるらしい。」


「……そうか。」



決して正確な答えではないが…

その言い方しかできないのも事実――



「…説明を続ける…。

もし、竜崎先生が裏切って作戦が漏れた場合…

ここにいる全員、誰もが確実に危険になる…

船まで逃げ切れれば助かる確率は高いが、

そこ迄の道が解らなければ逃げても意味がない…

その対処として、今からその場所を教える。



全員覚えていてほしい…


俺や手塚――他の誰かが死んでも、

一人だけでも辿り着けるように……」

 




『………………』




乾の言葉に張り詰めた空気が流れ、そして頷く…



「…船の場所は、地図でいうG−16、

東の崖沿いの崖に一部、加工された場所があり

そこを降りた小さな砂浜に

船が止めてある筈だ」


「…筈…?」


「竜崎先生がそう教えてくれた…

まだどうなっているのかは解らない…」


「…そう……ですか…。」



手塚が腕時計を見て顔を上げる



「予定時間はもうすぐだ。

各自武器を備えておけ」



手塚の言葉に各自武器を

取り出しやすい所に装備する…


も小さい小型銃を手に

戸惑いと不安の入り混じった瞳で見つめていた…



「…おい」


「ん?」



亜久津に呼ばれ、横を向くと

手にあった重さと感触が無くなり

それが亜久津の手移った



「…テメェにこんなもん持たせると

同士撃ちになりかねねぇんだよ。」


「なっ…しないよそんな事!!」


「なら持たなくていいだろーが」


「うっ……でも…せめて自分の身は自分で……」



そんなを亜久津は鼻で笑う…

それに対しては珍しく亜久津を睨んだ



「私だって何かしたいのっ

一人だけ最後まで守られてるなんてヤダよ!!」



「守られるのは嫌…かよ…
 

じゃあ、テメェはこれで相手を撃てんのか」



「!!」



亜久津の言葉には顔を背ける…

そのやりとりを他の者も見ていたが

あえて、誰一人、口を挟まなかった……

 

 



誰も、自分の好きな…

大切な人が誰かを傷つける所なんて見たくない…


 

 


もし、自分達の手が血で汚れてしまっても――


せめて彼女だけは…と、心の中で願ってしまう…

 

 

 

 


たとえそれが、

 

 

 

 

 

 

 

逆に彼女を傷つける結果になってしまっても―――







 

 

 

 

「…テメェはいいんだよ。それで。」


「………でも、私だけ…そんな…」


ちゃん。」



優しく掛けられた声に振り向くと

千石が優しい笑みを浮かべて言う…



「それが、俺達の救いなんだよ」


「……すく…い…?」


「そう、だからちゃんはこんな物騒な物、

持たなくていいんだ。

……ううん、持たないでほしいんだ。」



千石の言葉に賛成する様に頷く皆に、

は一人、唇を噛み締めて頷いた…






 

 

 

 

 

 


外は真っ暗な闇だった…



 

 

 


しかし、少しずつ…

 

 

 





まだ、見えない所で…

 

 

 





太陽の光は時間と共に昇り始めていた……












 

 

 

 

 























予定時刻まで、後5分…