「ふぅ…やっと終わったぜ…」



目の前には洗い終わった食器の山…

捲くっていた袖を戻しながら

サンジは椅子に腰掛けた…

朝食を食べ終わり、皆それぞれの事をしていて

キッチンにはサンジ以外誰も居ない…



「(確かナミさん…気象の変化もなさそうだし

次の島迄はまだ時間があるからゆっくりしてて良いっつってたっけな…)」



そんな事をぼんやりと考えながら脚を組み、煙草に火を付けた…



「(そういや…こんな風にゆっくりすんのは久しぶりだな…

…最近は海軍やら巨大魚やらに出くわして

そんな事考える余裕無かったからな…

…あとはクソマリモとルフィが船ぶっ壊したりな


……そういやぁ物音しねぇな…)」



いつもなら船が揺れるくらい騒がしいのに

珍しくキッチンの外からは物音がしない



「(…寝てんのか…?

流石にここ最近ろくに全員寝てねぇもんな…

…一応俺も寝とくか、後々いつ寝れっか解んねぇし…)」



銜えていた煙草の火を灰皿へ押し付けて消すと、

サンジはそのままゆっくりと瞼を閉じた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『おーい!!クソジジィ!!

俺は何してりゃあ良いんだよ!!』



『邪魔だからどっか行ってろ!!

出港は明後日の朝だからそれ迄に戻らなかったら置いて行く!!』



『んだとー!!!』



まだあの船に居て、俺が小さかった頃だっただろうか…

その日、料理の材料を補給する為に、

小さいが、良い品物の揃っている材料の隠れ島へと船を着けていた…


俺はまだガキだからっつー理由で

大きな荷物を運ぶ事は出来なかったし、

あのクソジジィにも邪魔扱いされていじけた俺は、

船から降りて海岸沿いに歩いてい た…


ジジィや船員の奴らに対して不満を呟きながら歩いていると

潮の匂いがふと鼻を掠める…



海の状態は見なくても音だけで解る、とても穏やかだ…



『……やっぱ…認めてもらえてないって事なのか…?』


『何が?』


『俺の船員としての存在が…
ってえ!?



背後からいきなり女の声が聞こえ、

普通に答えた自分もあれだが…

驚いて振り向くと、どちらかと言うと綺麗より可愛い女性(?)が居た…


?が付いたのはその子が女の子と言うわけでもなく

大人の女性と言うわけでもない容姿をしていたから…



『あっあんた誰だ!?』


『誰だ?ん〜〜……性別は女で多分人間?』


多分かよ!!!って、俺が聞いてるのは名前の事だ!!』


『名前?って言わなかった?』


『言ってねぇよ!!!』


『アハハ☆ドンマイ♪』


『何で俺が慰められなきゃいけないんだよ!!!』


『おっナイスツッコミ☆』


『…………はぁー…』


『ん?お疲れ?』


『………あんたの所為でな…』


『ゴメンゴメン(笑)』


『(謝る気ないだろ…)』


『ところで、何で落ち込んでたの?』


『…………え…?』


『溜息ついてたじゃん。

…あれ?ついてなかったかな?』


『ついて…ねぇ…よ……

(あれ?なんでムカついてたんだっけ…

…ああそうだ、邪魔扱いされたから…)』


『で、イライラはおさまった?』


『…え?あ…ああ…』


『そっか☆良かった♪』


『(解ってたんじゃんか)』



まんまとはめられたサンジはムッとした顔でを見る



『…なぁ…なんで声を掛けたんだ…?』


『さあ?』


『“さあ”!?気分で声かけてきたのかよ!?』


『ぅんや、いじけてる可愛い男の子をナンパしようと思っただけだけど?』


『っ!?
///



真っ赤になった俺を見てはクスッと笑うと

浜辺にあるちょっと大きめな岩に腰を下ろし、俺を見て手招きをした…



俺は熱くなった顔を見られたくなくて

少し下を向きながら同じ様に岩へ向かい

の隣に腰を下ろすと、

太陽で作られた自分達の影が凸凹で…

少し、理由は解らないけど悔しくなった…



『ねぇ、ところでキミの名前は何て言うの?』


『俺はサンジ、あの船でコック…

…の見習いやってんだ』


『サンジ?サンジ…ね。

私の事は普通にでいいよ☆

…で、サンジはまだ見習いなんだ?』


『っ今は見習いだけど、すぐにクソスゲェコックになるんだ!!』


『“クソスゲェコック”?

片仮名多いね(笑)』


『うっ…うるさいなぁ!
///


『……でも…うん。

サンジならすぐになれるよ!絶対!!』


『あ…ああ!!当たり前だろ!!!

そん時はにも俺の作った料理、食べさせてやるからな!!』


『本当?』


『本当に!』


『絶対?』


『絶対に!!』


『ホントのホント?』


『だぁー!!ホントのホントのホントだってーの!!!』



意地になって言い返すと、

は耐え切れなくなった様にクスクスと笑い出した…



『なっなんだよ!』


『ううん、何でもないよ☆』



そう言っているがまだ笑っている

俺は頬を膨らませ、顔を背ける



『あはは☆ゴメンって。

意地になって言い返すのが可愛くてさ♪つい、ね?』



俺は“可愛くて”と言う言葉に益々ムッときての事を少し睨んだが、

満面の笑みで笑いながら見てくる

そんな気持ちも消え失せた…



『それで、食べさせてくれるんだよね?

一人前のコックになったら』


『だからさっきからそう言ってるだろ!』


『一人前に…か、待てるかなぁ〜?』


『待ってろよ!!!絶対に――『クソスゲェコックになって戻って来るから?』



言わんとしていた言葉をに先に言われ

『うっ…』と、言葉が詰まる…

それに対してはまたクスクスと笑い始める



『〜〜〜〜
///



遊ばれていると解り、恥ずかしくなって下を向くと

いつの間にか周りがオレンジ色がかっていた事に気付いた…



『もう夕方かぁ〜』


『…………あのさ…』


『ん?』


『明日も…はここに居るのか…?』



少し不安げに俺が顔を見上げると、

は一瞬驚いた表情をした後、ふっと笑顔になり



『もちろん☆』



と、満面の笑みで返してくる…



『本当か!?』


『う・そ☆』


『ぇえ!?』


『嘘、居るよ☆』


『…っ
///



過剰反応をしてしまった自分が恥ずかしくて、

見られないように岩を飛び降りる…



『サンジ!!』



と名前を呼ばれ、まだ少し赤い顔を振り返させると



『また明日ね!!』



と、笑顔で手を振るに照れながらも手を振り返して、

俺は走って船へ戻った…


 




次の日も、俺はあの岩がある所へ向かった…

その日は色んな事を話した…

船に乗った理由、ジジィと遭難しかけた事…



俺の夢…



は興味深く聞いていて、

俺が『の事も何か話してほしい』と言った時、

一瞬悲しげな顔をして、あの話をしてくれた…



『私ね…小さい頃悪魔の実を食べちゃったんだ』


『悪魔の実!?』


『うん、サンジくらいの時にね…

美味しそうだったものだからつい…

悪魔の実だって知ってたんだけどね☆』


『“つい”で食うなよ!!

…で、どんな能力持ったんだ…?』


『時空を…渡る事が出来るの』


『時空を!?』


『そ、でもやりすぎると身体的にもヤバイらしくって…

女の私だと一回使うのが精一杯なんだってさ。

それ以上使うと……死んじゃうから…』


『!!』


『だから、あるけど使わないから無いようなものかな?』


『でもさ…使ったら……駄目…なんだろ…』


『二回使ったら…ね、でも使うとしても一度きりだよ☆』


『っ絶対だよな!!

絶対…使うとしても一度きりだぞ!!』


『うん、絶対だよ☆』


その言葉にホッと胸を撫で下ろす…

ガキだった俺でも解ってたんだ…

自分にとってが大きな存在になっていた事を…



『サンジ』



急に話かけられ意識を戻す



『明日の朝には島を出るんだよね?』


『…あ…』



言われて思い出してしまった…

そう、この島に居れるのは明日の朝…

しかも早朝迄だ…

あのジジィの事だ、船に乗り遅れれば置いて行かれる…



『……………』


『サーンージ!なーにしょげてんの、また会えるんでしょ?

そうじゃないとサンジの作った料理食べれないじゃない!!』


『そ…そうだな!!

また会えるんだもんな!』



その日はなるべく…

ギリギリまでと一緒に居た…

離れたくなかったからと言う理由が1番だったと思う…。



次の日の朝…

俺が目を覚ました時には既に出港していて…

別れ の言葉も言えなくて…




…その日からだったか…

男ばかりの船だから客の中に女性が居ると

と見間違える事も あったんだっけな…



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「……ンジ!!おい!サンジ!!」


「〜〜っんだよ!

俺は男なんぞに起こされても嬉しくねぇんだよルフィ」


「腹へった!!!」


「知るか!!!

さっき食ったばっかだろ!!!」



「さっきって…もう昼だぞぉ〜…

はーらーへったぁー!!!」


「ナミさん達がお腹空かせたらな」


「いーやーだー!!

腹へった腹へった腹へったー!!!」




と、ルフィが騒いでいると大きな音を起てて扉が開いた



「だー!!!もうっうるさいわよルフィ!!!」


「ナミ!!」「ナミさん
vV


「だってサンジが飯作ってくれないんだよ〜」


「ナミさん、お腹空きましたか?」


「私はまだ平気よ。

それより島に着いたからサンジ君も街、回って来ていいわよ?」


「はい
vVじゃあお言葉に甘えて…」


「俺も行「あんたは駄目よ!!船番してなさい 」


「えぇー―!!!」


「じゃあ行ってきますねナミさん」


「えぇ、いってらっしゃい」


「俺もー―!!!」


「お前はクソマリモと一緒に静かに船番してろ」


「ズリィぞサンジー!!!」



と、ルフィの声が聞こえる船から下り、

俺は使える食材でもないかと島を回り始めた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



「よし…これぐらいで良いだろ」



いっぱいに食材の詰まった紙袋を

両腕に抱えて小道を歩いていると、

横道から怒鳴り声が聞こえ立ち止まる



「おい、姉ちゃん!

いきなり上から落ちてきて何の挨拶も無しか?」



「さっき謝ったけど聞こえなかったの?

耳悪いんじゃない?」


「な!?」



どうやら言い争っている様だ…


サンジはヤレヤレ、と紙袋を道の端に置き

どんな女性が絡まれているのかと

その顔を見上げた瞬間…


 

 

 

 


一瞬、時が止まった…



 

 

 

 

男は頭にきたのか

その大きく太い腕を振り上げ、

手加減無しに殴りかかる



「女だからっていい気になってんじゃねぇぞ!!」



[パシィッ!!!]



サンジは殴ろうとした男の間に入り込み

拳を自らの掌で止め、それを防ぐ



「!?っ誰だテメェ!!



「……男は、女に手を上げちゃいけないんだぜ…

…特に」



そう言いかけて男を鋭い瞳で睨む



「人の女にはな」



「ッヒィ!!」



男はサンジから逃げるようにその場を走り去った…


サンジが何かを耐える様に後ろへ振り向くと

女性は…ただ嬉しそうに、笑っていた




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「待ちきれなくてお料理…頂きに参りました♪


 





クソスゲェコックさん?」



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





懐かしい笑顔が







そこにあった…





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜あとがき〜

初ワンピのサンジ夢でございます(汗)

好きなんです、サンジさんが。

大好きなんです、子サンジが。

子供の時は可愛くて

大人になったらカッコイイだなんて…

そんな素敵なサンジさんが大大大好きなんです☆


でもワンピの漫画は持ってないので寂しいです(泣)

アニメを見てキャーキャー言ってます。


…っと、そんな私情は置いといて。

とにかく、カッコ可愛いサンジさんを味わっていただけたなら

満足でございます♪