「〜〜♪」



小さく鼻歌を歌いながら歩く…

先程まででは考えられない程安心し

そして上機嫌だ…

その理由は…



「あっくんと手繋ぎ〜♪う〜れし〜ぃな〜♪」


「っ歌うんじゃねぇ!!
///



この状況下でこの雰囲気…

普通なら有り得ない事なのだがは気にしない



「えぇ〜だってこんな嬉しい事滅多に…」


「状況考えろ!!

テメェがどこ行くか解んねぇから…つーかテメェが離さねぇから!!」


「大丈夫!死んでも離さないから☆」


「っ〜〜〜
///



亜久津はその言葉に赤面するとから顔を背け歩く…

その反応に満足したは笑顔のまま一緒に歩く…

 

 


まるで、こんなゲーム…無いかの様だった…

 

 


何時も通り…平凡な変わる筈のないと思ってた日々と変わりないようで…

は亜久津の手を…強く握り直した…

この……こんな時が……ずっと続けば良いと…

 


そう…願いながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 





森に入って1時間ぐらい経ったと思う…



恐いくらい何もない…

何も起こらない……

本当だったらいい事なのだが今はそれが恐い…

 


何か…起こる気がする…

 


直感的にそう感じた…

なんだか、そわそわする感じ…

落ち着く事の出来ない感覚…



「……あっくん…」


「あ?」


「誰か近くにいる?」


「!?」



の言葉に驚き、亜久津は周りに気を張る…


聞こえるのは風で擦れる葉の音と

二人の吐息だけ…



「………居ねぇよ……」


「……そっか……」


「何か聞こえたのかよ」


「んーん………あ…れ?」


「?」


「今度は何か聞こえた」


「!!」



もう一度音が聞こえないかと耳を澄ます…


[……ガサッ…ガサ…]



「!?」



確かに聞こえる…

亜久津はマシンガンを構えると音のなる方へ向ける…



「あっくん!撃っちゃ駄目!!」


「構えるだけだ…仕掛けてきたら撃つ…」


「…………う
…」



[………ガサッ]


は亜久津の服を掴む…

音がすぐそこに迫る…


[……ガサガサッ]


 


目の前の草むらが動き…

 



白いに
赤黒い斑点模様の付いた服が…

 



草を掻き分けた…



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………やっと、見つけましたよ……さん…」

 

 

 

 

 

 

 

「!?……室町…く…」



虚ろな笑みを浮かべた彼は


本当にあの彼なのだろうか…?

白い制服に付いた赤黒いモノがの視界をチラつく…




「テメェ…あいつは…太一はどうした!!」


「………え…?

………あぁ……太一……」



思い出したかのようにその名前を繰り返した…

まるで“太一”が誰かを解っていなかったようだった…




「そう…そうだった…さんは…見て…ないんだった…」




壊れた人形の様な笑みでを見る…


どこか…焦点の合っていない目で…



さんが行っちゃった後…」


「……ゃ…」


「太一の頭に銃口をまっすぐ向けて…」


「……い…や…」



「指に力入れたら、ほんの一瞬で…」



「嫌っ」

 






「−死んだよ−」

 

 

 





「っ!!」


「テメェ…」


「そんなに恐い顔しないで下さいよ…

本当にいい仲間でしたよ…

マネージャーとしても1番働いてたッスね…

それに亜久津、お前を誰よりも慕っていたのも太一だった…」


「…………」


室町の言葉に亜久津は歯軋りをし

マシンガンを強く握る…

は愕然とした表情で室町を見た後

震える唇を開いた…


「そん…な…嘘…だよね…?

……壇君が死ぬ…なんてっ……」


さん…まだ信じてくれないんですか…?

…あ、じゃあ……これ見てくれれば…

信じて…くれますよね…?」



おもむろに制服のポケットを探ると

それをに見せるように前へ出した



「そ……れ……」


「スタンガン…ッスよ

……太一の…ね」


「そん…なっ…

(嘘…嘘だよねっ…

壇…君っ…追い付くって…大丈夫って!!)」



口を押さえ、はたじろいだ…

今にも倒れそうな身体を亜久津が片手で後ろから支え

もう一方の手…マシンガンを持った手を室町に向ける…



「ああ、亜久津…撃たないで下さいよ?

…俺、爆弾持ってるんスから…」



そう言うとリュックを下ろし、その中から一つ…

手榴弾を取り出す



「気をつけて下さいね…

こんな所で自分の所為でさん殺したくないッスよね?」


「…っ…」


「さて…さん、本題に入りましょう…」



「……本…題…?」


「ええ、簡単ですよ…

さんが俺の所へ来るか…

それとも亜久津と一緒に今、ここで死ぬか…」


「っ!?」


「迷うような選択じゃないですよ?

と言うより、迷うことなく決まっているじゃないですか…

誰も“死”なんて選びたくない筈ですよ…?

勿論、さん、貴女だって死ぬのは怖いんですよね?

だったらもう選択肢は決まってる

来てください。俺の所へ…

さん、貴女一人で

あ、でもそうしたら亜久津が死ぬのは…

解りますよね…?」


「!?」


「なっテメェ何言って!!」



へ手を差し伸べる室町に

二人は困惑した表情で後ずさる…


そんな二人…いや、亜久津に

室町は笑顔を消した



「亜久津…お前も知ってる筈だよな?

ここに居る全員がさんを…」


「っ!!」




室町の言葉に事筋を察したのか

亜久津はを自分の後ろへ

隠すように手を引く


事の事情が解らない

背中越しに亜久津を見上げる



「あっくん…な…に…?

何の事…?私が…どうかしたの?」


「…なんでもねぇ…」


さん、俺の所に来れば教えますよ?

それに…最後まで俺が貴女を守りきって

二人で生きて帰ることができます

…どうですか?そんな計画性のない奴と居ても

生き残れる確信はないッスよ?」



そう言った室町の言葉に

は目を見開く



「……室町君は…

ここから抜け出す方法を…知ってるの…?」



確かに、さっき…

“生きて帰ることができる”と

そうハッキリと室町は告げた…

ということは何か…帰れる方法を知っているということ…


驚いた顔で聞いてきた

室町は笑顔で返す…



「ええ…ここからざっと北西でしょうか…

そこでボートを見付けましてね」


「ボート……なら!皆を乗せて全員で脱出できるよ!!

ねぇ室町君!全員で一緒にっ
「無理、ですね」



の言葉を遮り

室町は首を振る



「俺はさん以外を乗せて

脱出する気なんて有りませんから」


「そん…な……

…んで…っなんで私なの!?

なんで私以外駄目なの!?

私だけ生き残れたって嬉しくないっ

皆の居ない世界だったら私が生きて経って意味なんて無い!

私だけならっ…

私しか乗れないなら私も乗らない!!

皆と…あっくんとここに残る!!」




目に涙を浮かべ

叫ぶように言い切った

室町は首を傾げる



「何を…言って…るんですかさん…?」


「なんで私なのかが解んない!!

私だけ生き残ったって嬉しくも幸せでもないよ!!」



その言葉に室町は悲しげな顔でを見ると

ゆっくりと俯く…



「……そう…ですか……

…仕方ない…ッスね…」



持っている手榴弾を強く握る…



「おい…まさかテメェ」


「死んでもら…わなきゃ…ならな…いじゃ…ないッスか…

さ…んにも…」


「「!!」」


さ…さんが…わ…悪いんで…すよ……?」



手榴弾を前に構え…

その引き金に指をかける



「一緒に……しッ…死にましょう……さ…」



“壊れた人形”という言葉が合うのかもしれない…

室町の瞳には光が宿っていなかった…

 
はその瞳に怯え

恐怖の入り混じった瞳で室町を見る


「や…めて……室町君っ…

…だ…め…駄目ぇ!!」

 

 



「…さようなら…

さん…」

 

 




目を閉じ…



室町の手が


手榴弾の引き金を引こうとした瞬間

 

 

 

 

 


[ガサガサッ…ドンッ!]

 

 

 

 

 


何かが林の中から突進し

室町と共に草むらに倒れる



「「!?」」






一瞬の事に驚く二人を前に

突進した…同じ白い制服の男は立ち上がり

室町を見下ろした…



その人物に…

と亜久津は声も出なかった…

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 



「こらこら、なーにやってんの?


…亜久津と…


……僕の大切なちゃんに」



 

 

 

 

 



「っ千石…さん…!?」


「キ……ヨ……!?」



名前を呼ばれ

男――千石はへ笑顔を向ける…



ちゃん…

やっと、会えたね…

亜久津も、無事で良かった…」


「…っキ…ヨぉ…」


今にも泣きそうな顔をする

千石は苦笑いを浮かべる…


草むらへ倒れていた室町はそのまま

千石を見上げる


手榴弾は室町から少し離れた場所に転がっていた…



「千石さん…どうして貴方がここに…?」


「どーもこーもないよ…

大切なちゃんの…

今にも泣きそうな声が聞こえたからね…

助けに行かないわけにはいかないでしょう…?」


「まさか……この広い森で偶然でも会う事なんて…」


「室町君〜?

ずぅっと僕と同じチームだったのに、解らないのかな〜?」



からかう様にそう言った千石に

室町は溜息を吐く



「………ラッキー………ですか………」


「大正解〜♪

伊達にラッキー千石の名前を名乗ってないよ?俺☆」


「そう……ですね…

…貴方と居ると良いのか悪いのか…

…少なくとも今は悪いッスね…」


「…そっか……」


悲しそうな笑みを浮かべた千石に

は声をかける



「……キヨ……」


ちゃん、室町君の傍にある手榴弾…取ってくんない?

亜久津でもいいからさ」


「あ…うんっ…」


タタッ…と手榴弾に近付くと

それをゆっくり拾い上げる



「亜久津の所に戻って」


「うん…」



が亜久津の元に戻るのを見ると

再度室町を見る…



「室町君…なんでこんな事…

…君はやる筈ないって、思ってたのに……」



悲しげな目で室町を見下ろす千石に

室町は小さく笑った…



「…千石…さん……

…貴方なら……いつもの“ラッキー”で

他の人…勝手に巻き込んで

助けちゃうかもしれない…スね」


「……室町…君…?」


どこか先程と様子の違う室町に

千石は違和感を覚えた

と同時に室町は千石を押しのける



「うわっ!?」



室町はよろめいていた千石からギリギリまで離れると

ポケットから隠し持っていた手榴弾を取り出す…



「室町…君?」


「……亜久津…さん…

…すみ…ませんでした…

…ボートがあるのは本当ッスから…

それで…本当に…逃げれるかも…しれません…

それと千石さん…

…色んな意味で本当に、尊敬…してました……」


「……待ってよ…室町君…

何言ってんの?

そんな…別れ話みたいな事っ…」


「…本当に…ありがとうございました…」



一瞬…笑顔を見せた室町の目から涙がこぼれた…



「室町くっ」



駆け寄る時間なんてなかった…










[−−ドォ……ン−−]








一瞬光に包まれたかと思うと爆音が響く…

…それは…室町のいた場所から聞こえた…

煙が立ち込めたが、風と共に流され…

残されたのは……




「室町君っ……なんでっ……

なんで死ななきゃならなかったんだ!!!」



息のない…

…器だけが、転がっていた……


「っキヨ…室町…君……は……?」


「………」



何も言わず首を横に振る…



「そん…な…」



さっきまでは自分達を殺そうとしていた仲間…


…しかし最後は……

 



最後は……

 




「っなん…で……」


「……………」


「……おい…」


「どうしたの亜久津」


「移動…した方がいいみたいだぜ…?」


「?…なん……さっきの爆音で……?」


「ああ…」


「そっか…ちゃん」


「うん…解ってる……移動しよ…」



目に溜まった涙を拭くと

室町へ駆け寄り、リュックを拾う…



「ごめんね…これ、貰うね……

…絶対…生き残るから…

皆と一緒に…」


ちゃん…」



亜久津と千石の方に振り向いたの瞳には

決意が、宿っていた……


「ああ…」


「うん…きっと…ちゃんの願いなら叶うよ」


「へへ
//ありがと♪

…先に進もっか…」

 

 



道のない森を見る…

 

 


行き先は解らない…

 

 


それでも、進むしかないから…

 

 



進もう…それしか道は…

 

 

 

 



…ないのだから…




 

 

 

 

 

 



あれから数十分歩いた…

未だ森の中を歩く…



「結構歩いたねー…ちゃんは大丈夫?」


「うん☆大丈夫だよ♪」


「よかった♪

…あ…でも……亜久津が駄目そうだね」


「あ”?何がだよ」


「ん〜?…だってさ〜…

俺にちゃん取られてイラついてるじゃん」


「イラついてねーよ!」


「そっかー…ごめんねあっくん…構ってあげなくて…

ちゃんと構うから!!キヨと一緒に!!」


「構うな!!!」



二人のやり取りを見ていた千石は

小さく笑みを浮かべた…



「…よかった…」


「「え(あ”)?」」


「俺、二人に会ってから

ずっと二人のそういう雰囲気…感じなかったからさ☆」


「あ……」


ちゃんはさ…ずっと笑ってなかったし…

やっと、笑ってくれた(^^)」


「そう…だっけ…」


「やっぱり亜久津使うと1番効率いいね♪」


「なっ
///


「ちょっとキヨ!!
///


「初々しいね〜二人共♪」


「もう!
///…あ!あのさ…」


「ん?」

「キヨは…私達に会う前に誰かに会った?」


「あ!!言い忘れてた!

あのね、ちゃんとこの部長さん…

手塚に会ったよ!!」


「手塚部長に!?」


「うんそう!

それで、ある作戦立ててるから

出来るだけ早く集まってほしいって言われてたんだ!!」


「ぇえ!?そんな大事な事……」


「あははメンゴ、メンゴ…



ちゃんの事で頭がいっぱいになっててさ…」



「え!?
///


「ほんとの事だよ☆」


「どういう…ひゃっ」



言いかけたところで

亜久津がを千石から離すように引っ張る



「あっくん…?」


「ちぇー……でも俺は本気だよ?

ちゃん♪」


「え…?」


「ごちゃごちゃ喋ってないでさっさと行くぞ!」


「はーい♪」


「え!?あっくんなんでまた機嫌悪いの!?」


「まぁまぁ、気にしない気にしない♪」


「っ行くぞ!」



そう言って引き寄せるようにの手を握り歩く



「え!?あっくん!?」


「あ!!ズルーイ!!俺も俺も〜♪」



そう言って千石もの手を握る…

間に挟まれたはいきなりな事に驚きを隠せず

頭に?を浮かべている



「(何か…ちょっと…

嬉しいかも…しれない……
///)」


三人はそれぞれ手を繋ぎ

薄暗い森を進んだ…


 

 

 

 

 

そう…

 

 

 

 

 

 

 


この手が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この温もりが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと


 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、確実に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違う道を歩むことを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ…
























 

 

 


知るよしもなかった……