「…………ん…」
潮の香りと波の音が聞こえる…
ゆっくりと目を開けると外はもう朝だった…
「…あっ…くん…?」
周りを見渡したが亜久津の姿が見当たらない
「あっくん!?」
勢いよく起き上がるとパサッ…と
の肩に掛かっていた亜久津の学ランが落ちる…
は学ランを持つと洞窟から出る
「………………」
不安で仕方がない…
亜久津が居ないだけで
こんなに不安な気持ちになるとは思わなかった…
いや、亜久津が自分の傍から居なくなるなんて…
考えてさえいなかった…
「っ……ぁ…くん…」
「おい」
「!?」
振り返ると森へ行っていたのだろう…
少し汚れたワイシャツを着ている亜久津が
眉間にシワを寄せながら立っていた…
「起きたのかよ、だったら洞窟で待ってろ…
お前の事だから誰かに見つかりかねねぇんだよ」
は一瞬、放心状態だったが
すぐハッとし、キッと亜久津を睨む
「っバカあっくん!!」
「ぁあ!?」
は亜久津へ近付くとポカポカと力無く殴る…
亜久津は訳が解らないといった様に
困惑した表情でその両手を止める
「っ心配……
しちゃったじゃんかぁ……」
両手を掴まれたまま
いきなり泣き始めるに亜久津は溜息を吐く
「っ〜〜〜…ξ」
自分の所為なのは何時もの事だが
こうゆう時どうすれば良いか分からない…
だからと言って此処で泣かせておくわけにもいかない…
「っ〜〜…一先ず洞窟に戻るぞ…
その後いくらでも話は聞いてやる…」
の手を離すと洞窟に向かって歩き出す…
ちらっと横目で見ると一応着いて来ているようだ…
洞窟へ入り壁に寄り掛かるように座る
も涙を擦りながら亜久津の隣に座る
「「………………」」
少しの間沈黙が続く…
亜久津は史香の顔をまともに見れず反対を向く…
…すると肩に軽く重さを感じ
少しの方を向くとの頭が寄り掛かっていた
「………おい…」
「………………」
泣き疲れて寝てしまったようだ…
考えてみればそんな事当たり前だ
部活をしていたとはいえ約一日…
体力的にも精神的にも酷く疲れていたはずだ…
少なくともは女、男とは体力的にも大きな差がある…
「………………」
忘れていたわけじゃない…
なら大丈夫だろうと
勝手に思い込んでいる自分がいた
きっと“あの事”を伝えても大丈夫だろうとさっきまでは思っていた…
「…………くそがっ」
自分に向けての言葉…
自分の考えの甘さがハッキリとしている現状…
その事実にいらつきと悔しさを覚え
力任せに地面にたたき付けようとした
が、その手を包み込むように止められる…
「!?」
「駄目…だよ…あっくん…
そんな事したら…手…傷ついちゃう…
…だから…ね…?」
起きたばかりで
目がしっかりと開かない顔では柔らかく微笑む…
亜久津はその時確かに
苛立ちが消えていくのが解った…
…と、同時に微笑んでくれた安心感も出てくる
「えへへ…ちょっと寝ちゃった//
…もぅ…大丈夫だよ…(^^)」
目を擦りながら照れた様に笑う…
そして、スッ…と亜久津を見るとまた微笑む
「だからね、一つ頑張ります」
「…………あ?」
「あのね、人が死んで
騒ぐなってゆうのは無理だけど…
…あっくんの邪魔とか迷惑とか…
かけないようにするから…
……だか…ら……
置いてかないで…」
その言葉に亜久津は一瞬驚いたように目を見開くが
すぐ元に戻すとからまた目線を外し
置くようにの頭に手を乗せる…
「…………置いてかねぇよ……」
はバッと顔を上げると
亜久津が照れている事が解り
嬉しさが込み上げると同時に亜久津におもいきり抱き着く
「!?っだから抱き着くんじゃねぇ!!///」
「だって嬉しいんだもん!!
今度からは絶対に一人でどっか行かないでね!」
「っ〜〜〜〜///」
本当に嬉しそうなに
無理矢理引きはがす事も出来ず
亜久津の手は行き場を失う
「あっくん♪抱きしめてくれてもいいんだよ?(ニヤリ)」
「っ誰がやるかよ!!///」
「え〜……寝る時はしてくれたのになぁ〜…」
「っ〜〜るせぇ!///」
「………え…?
もしかしてあの時あっくん…起きてた!?」
「なっ!起きてねぇよ!!///」
「えっじゃあもしかして
意識があって抱きしめ…「知るか!!森にモノ探しに行くぞ!!(///)」
「えっちょっ待ってよ!!あっくん!?」
顔を赤面させながら亜久津は洞窟を出ていく…
シン…と洞窟が静かになる中で
は顔を隠すように両手で頬を覆う…
「……あっくん…それは…反則だってばぁ…///」
からかう予定で言った言葉…
あれは亜久津が寝ぼけてやった事だと思っていた…
そうじゃないとあんな事やらないと…
やるはずないと……
それが実は亜久津は起きていて
しかもさっきの亜久津の態度で本当の事だと分かってしまった…
…それが…嬉しすぎて…
「(…あっくんと顔…合わせられないかも…///
……バカあっくん///)」
顔の熱を冷まそうと洞窟にいると
亜久津が洞窟の入口の前に戻って来る
「(あ…そっか、私が置いていかないでって言ったんだよね…)」
軽く深呼吸をして亜久津のもとへ走って行く
「あ〜っくん♪待たせてゴメンね(^^)
森に行って何やるんだっけ?」
「…武器になりそうなモンを探す…
俺のマシンガンだけじゃ安心できねぇからな…」
「ふ〜ん…よし!じゃあレッツゴー!!」
「…騒ぐな」
半場呆れ気味の亜久津に
元気良く返答すると、奥の見えない森に入った…
足元が悪く、道とは呼べない場所を歩いていく
「おっとと…ほんと足場悪いよね…」
木の根に引っ掛かりながらも進んでいく…
亜久津は慣れているのか、力任せに進んでいるのか…
どんどん先に行く
「あっ……」
名前を呼びそうになるのを堪える…
こんな事で亜久津に迷惑をかけてはいけない
そうさっき決めたばかりではないかと…
必死に亜久津に着いていく…
だんだん離れていくのが解るが
呼ばないでひたすら歩く
「…………あれ?」
気が付いた時には
前にいたはずの亜久津の姿が無くなっていた…
「もしかして…はぐれ…ちゃった?
……やばいなぁ…」
平然を装っているものの内心はひどく焦っている…
「あんまり…動かない方がいいかな…」
その場に立ち尽くす…
「………………」
森は怖いくらいに静かだ…
聞こえるのは風と枝が揺れて葉が触れ合う音…
…ふと…一瞬…何かが頭に遮る…
「……?」
何だろうかと思い出そうとする…
森と…暗闇……
!!
頭に鮮明に思い出される観月の影…
上下に動く影…
…生々しい臭いとそれを刺している音…
…どれもがフラッシュバックのように頭に浮かぶ…
「っ!?」
力が抜けしゃがみ込む…
体が思い出したように震える…
心臓の音が煩いくらいに鳴り
目の前がぐらつく…
「(いやっ………誰…かっ…
………?…前にも…こんな事…あった……?)」
そぅ…確か…このゲームが始まってすぐ…
「(誰だった…?
…あの時…助けて…くれたのは……?…)」
森で…怖くて逃げてて…
木に引っ掛かって…誰かが………
…!
「っ…あっくん!!」
「どこ行ってんだテメェはっ…」
叫んだ瞬間…少しいらついた声と共に
林の中から亜久津が出てくる…
「…あっ……くん?」
「着いてこれねぇなら言え!
迷われるよりはずっとマシだっ…」
息が上がってる…
必死で捜してくれた…?私を…?
あの時も…そうだったの…?
無意識に涙が出てきて頬をつたう…
「!?なっ…なんで泣いてんだよ!?」
突然泣き出したに驚き
亜久津は混乱する…
「ごめ…っ…なさ…い…
…めぇ…わく…かけたくなく…て…っ…」
その言葉に亜久津はどう返答しようか
少し迷うそぶりを見せた後、溜息を吐きを見る
「そんな事で一々泣いてんじゃねーよ」
「…っでも!私にとったらそんな事じゃないの!」
「誰もテメェのした事が
迷惑だの邪魔だの言ってねぇだろ…」
その言葉にはっとしたようには亜久津を見る…
その目は真剣で…嘘は言ってなくて…
「っ…うんっ…」
二度目だ…二回も…あっくんに助けてもらっちゃった…
…ありがとう……ありがと……
いまだ泣いているにどうしようかと頭を悩ませる…
「…行くぞ…」
亜久津が一言そう言うとは涙を拭い
亜久津にとぼとぼと着いていく
今度は亜久津がの歩測に合わせて歩く…
その行動には嬉しそうに笑い…
そっと…手を繋いだ……
…
「あは☆俺ってやっぱラッキー♪」
…やっと見つけた…
…大事な人…
大事な仲間…
歩いていたら…聞こえたんだ…
聞き慣れた声が…
あの二人の声が
実際聞こえてはいなかったけど…
聞こえた気がした…
遠くから見てみたら…
見つけたんだ…大事な二人を…
「やっと…見つけた…
亜久津…
ちゃん…」