「やっ…離してあっくん!!ねぇっ!!」
「黙ってろ!!」
「でも壇君が!!」
「っぅんな事テメーに言われなくても解ってんだよ!!
今は黙ってろ!!」
「……あっ…くん…?」
の問い掛けに答えず、只暗い森をひたすら走る…
は亜久津のいつもと違う様子に
戸惑いを感じながらも言葉に従う…
…どれくらい走っただろう…
かなりの距離を走ったのは分かる
だが亜久津は息一つ乱さず今だ小走り状態で走っている…
…を事を気にしての事だろう…
「(?)あっくん?」
「あ?…何だよ」
「何か…聞こえない?
何て言うか…波の音…」
確かに耳をすますと
確かに波の音が微かに聞こえる…
亜久津はその音がする方向へ向かい、走る
少しずつ音が大きくなり
森をぬけると共に光に包まれ
目の前に白い浜辺と蒼い海が一面に広がる…
「あっくん海、海!」
「言わなくても解ってる
いったん静かにしろ、周りの音が聞こえねぇ。」
「はーい。」
耳に聞こえるのは波の音だけで
人の気配は無く、静かに潮風が頬を擦り抜けて行く…
「あっくんもぅ平気?
良いなら一回下ろしてほしいな…もう、大丈夫だから」
「………………」
何も言わずにゆっくりとを下ろし
森を左にして森沿いに浜辺を歩き出す…
も亜久津を追う様にして着いて行く…
「何もないね〜…」
「……………」
「何もないね…」
「……………」
「何もないね!!」
「るせぇっ一々何度も言わなくても聞こえてんだよ!」
「なら返事してよー!
…て、…何か気にしてる?」
「………してねぇ。」
「その間は何よ…
……私は別に怒ってないからね?さっきの事…」
「してねぇって言ってんだろ
…あんま騒がしくしてっと他の奴等に気付かれんだよ。」
「はいはい♪どこと無く安心してる様に見えるけど
そういう事にしておきまーす☆」
「っ!!してねぇ!!」
「そーですね♪」
「テメッちゃんと聞いてんのかよ!!」
「そーですね♪」
「お「あ!!!」
「(!?)っんなんだよ!!」
「あれって…家?」
「あ?どこにそんなもんあるんだよ。」
「え?だってほら、あの丘の上に…。」
の指を指した方向を見ると
確かに古びた家が見える…
「あそこに行く?」
「…目立つ所に居たら狙われるって解ってんのか?」
「あ……確かに」
「ハァ………」
「あ!今ため息ついたでしょ〜!!」
「さっさと行くぞ。」
「ムゥー……
(なんだろ…あっくん、会ったときより…)
…あっくん待ってよー♪」
走って行き亜久津の腰に抱き着く
「っ抱き着くな!///
歩く邪魔だ!!」
「照れなくても良いのに〜♪
あっくんは照れやさんなんだか…ら………」
「いいから離れろ!………て、おい…?」
急に静かになったに疑問をいだき
首だけで後ろを見ると
抱き着いたまま固まり、瞬きもせずに森を見ている…
何を見ているのかと自分も同じ方向を見ると
森の奥の方に何かが何度も上下に動いている…
「っ!?」
亜久津は振り返っての右腕を掴み
近くの木へを前から抱きしめる様に隠れ
木の影から“何か”の様子をうかがう…
…は亜久津の右腕の服を掴みながら
少し顔を出してその“何か”を見る…
すぐ暗闇に目が慣れ
見えてきたのは……
「観づ…き…さんっ」
そこには…血だらけになりながらカマを振り上げている観月が居た…上下に何度も動いていたのは
その下に転がっているもう誰かも分からない相手に向けて
何度も、何度も振り下ろしていた赤く染まったカマ…
「……そん…な…観月さっ……」
「…誰か、そこに居るんですか?」
亜久津は今にも倒れそうなを強く抱きしめ息を潜める…
…は震えながら、亜久津のシャツに顔を埋めた…
「風…ですか…」
そう言うと観月はゆっくり亜久津達の居る場所から離れていく……
「…………居なくなったか………おい、」
声をかけても返事はなく
は只小さく震えている…
亜久津は少し顔をしかめると
腕の中で震えているを片腕だけで抱きしめる…
「…一先ずこっから離れる……立つぞ…」
「…………ぅん…」
が立つ事でさえ精一杯なのが分かり
亜久津はを抱き上げる…
からの抵抗は無く、ただ小刻みに震えているのが亜久津に伝わる…
亜久津は何も言わずに歩き始める…
「…………あっくん…」
「…何だよ…」
「…あの…ね……」
の声が震える
「………青…学………だったの…
…ジャージ…が……青学の…ジャージ…だったの………」
「………………」
はそれっきり喋らずに
堪える様に泣き始めた…
そして少し経つと泣き疲れたのか
は亜久津の背中で静かに眠りについた………
「…ぃ………おい、史香」
「…ん…………あっ…くん……?」
「起きろ」
「うん…ここ…は?」
「崖下の洞窟だ」
上半身を起こし、周りを見渡す…
確かに洞窟のようだ、外はすでに暗くなっていた……
「あれ…寒くない…?」
「当たり前だろぅが…
目の前にあるのが見えねぇのかよ…」
そう言われ目を前に移すとパチパチと赤い炎が燃えている…
「なんで…火が……」
亜久津を見ると同時に
「………あぁ。」
「何だよ……」
「納得しただけです」
「そーかよ」
「「………………」」
しばらく沈黙が続き
最初に口を開いたのは亜久津だった…
「平気かよ。」
「……大丈夫…だよ」
「大丈夫……か、それじゃぁ答えになってねぇだろーが…」
「……そぅ…だね…」
「……ハァ………お前はどうしたいんだよ…」
「…わた…し……?」
「そーだ…お前だ…」
「わた…しは……私は……助けたい……」
「助ける…?」
「このゲームに…乗ってない人も…
乗ってしまった人も……皆……」
「そーかよ……それで
お前がどんなめに会うか…解ってんのか…?
…さっきみたいな事が何度もあるかもしれねぇんだぜ?
もしかしたら自分自身が危険な目に会って
お前自身で誰かを殺す事に成り兼ねないかもしれねぇんだぜ?」
「………それでも……きっと信じて
手伝ってくれる人はいるって信じてるっ
だから私は“仲間”を助けたいの!!」
がそう言い切ると
亜久津はまた小さく溜息を吐き
から目線を外す
「……解った」
「……あっくん…?」
「付き合ってやる……テメーの望みにな…」
「っあっくん!!ありがとう!!」
やっと笑顔を見せたにふっと笑みを溢し
に自分の上着を投げる
「(!?)あっくん?」
「俺は寝る…テメェもさっさと寝ろ」
「えっでも…あっくんその格好じゃ寒いよ?」
「っるせぇ、テメェと違ってそんなひ弱じゃねぇ」
亜久津はに背を向け横になる
「(…これも私の…為…?…だよねぇ…どう考えても)
……あ〜っくんVv」
は苦笑いを浮かべると
亜久津に後ろから飛び掛かる様に抱き着く
「っ!?離れろバカ!重めぇんだよ!!」
「なにをー!!!……と、今回は許してあげよう」
「あ?」
は亜久津から離れると上着を亜久津に渡す…
「…いらねぇーのかよ」
「良いから着て☆」
「(?)」
頭に?マークを浮かべながらも普通に着る
「普通に座って☆」
「何でだよ…?」
「いいから!」
勿論、亜久津の普通の座り方は
前に足を投げ出す状態になるわけで…
「で、テメーは何がしたいんだよ…?」
その言葉にニッコリとは笑い
亜久津の足の間に本人を背にしてストンと座る
「なっ///」
は亜久津を気にせず
そのまま“トン…”と寄り掛かる…
「お前何してっ///離れろ!!///」
「い〜や♪これならあったかいし
どちらかが寒くなるなんて事ないもーん」
「俺は寒くねっ「だめ?」
上目使いで亜久津を見る…
目を反らさずに少し悲しい顔で亜久津を見れば
亜久津が折れる事くらいは知っている…
「っ〜〜〜〜〜///」
「ねぇ…だめ?」
「…………………どーでもいい……」
の視線に負け
ぐったりとしながらボソッっと呟き、肩を下ろす
「ありがと♪」
その様子にイジメすぎたかなと思いながらもは目を閉じる……
「……………!?」
数分経った頃、急に少し苦しくなったかと思えば
亜久津が後ろから抱きしめている事に史香は気付く…
意識があるのか無いのか…
は嬉しそうにそのまま眠った……
…………………………
「はは…もう暗いや」
青暗い空を見ながら只呟く……
後ろにある木に寄り掛かり、少し古い毛布を体を包む様に巻いた…
「にしても俺ってやっぱりラッキー♪
360°死角な場所見つけて、しかも毛布までゲットしちゃうなんてね〜☆」
頑張って…無理やり笑顔を造る…
「あはは……
………でも、やっぱり……アンラッキー……かな……
…君が隣に居ないなんて…ね…」
本当は傍に居てほしいのにな…
何で居ないんだろ…きっと君の傍には誰か居るんだろうね…
「ちゃん……」
僕らしくないって言うのかな、君は…
それでも…
俺にとって
誰よりも愛しい存在だから…
だから…
会いたいよ…君に…