「ヒック…ふぇ…ック…」



エレベーターの中では座り込んだまま泣いていた…


まさか誰より信じていた親友が…


いや、それよりもドアが閉まった後…どうなったのかが心配で……



「っね…ぇ…あっくん……

キヨ…大丈…夫…かなぁっ…

…死んでなんかっ…いないよね…!」



「…あいつなら…平気だろ…

…それより…その顔で居るつもりかよ…」



「……そ…だねっ…キヨなら…大丈夫だよね…」

 




立ち上がって涙を拭うと、深呼吸をして亜久津を見る

 




「ありがとう、あっくん☆

なんか…あっくんには慰めてもらいっぱなしだね…」



と、少し照れたようには下を向く…



すると、一言「…おい」と、呼ばれ、どうしたのかと顔を上げた瞬間……


 

 

 

 

 

 

 

 

 





唇に温かい物が触れ…それはすぐに離れた…

 

 

 

 

 

 






 




「…………へ…?」




と、間抜けな声を出してしまう…



それは、あまりに突然な事すぎて……




「……………あっ…くん……?

……え?あれ?今…」



確かめるように自分の唇に触れる…


確かにその感触は残っていて…




「えっ…と……あっくん……?
///

 


亜久津は後ろを向いていて…

それでも、逸らした顔…耳が赤くなっているのを見て…も赤くなる。




「あっくん……不意打ちは…卑怯だよぉ…
///



「……ぅるせぇ
//




まさか、あの亜久津からされるなんて考えもしなかった事で…


…なんだか不意打ちを喰らって、嬉しいような悔しいような……いや、悔しい。




「……あっくん☆」



「…あ?」



「またあっくんからしてくれる?」




ニヤニヤしながら亜久津の反応を待つ…


きっといつものように真っ赤になって否定するかと思ったから…

 

 

 

…けれど


 

 

 

 

 

 

 

 



「……ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



「………………………………………え?


 

 

 

 

[ピーンポーン]
 



 

 

 




の声とエレベーターの音が重なる




「あ…あっくん!?ちょっ…いいい今!!
///




の反応に小さく笑うとそのままエレベーターを下りる



「まっ待ってよあっくん!!今のどうゆう…
///




亜久津を追ってもエレベーターを下りる




「あっくん!!あっくんってば!!
///



亜久津を追おうと急いだ為、


立ち止まった亜久津にぶつかる




「急に止まらないでよあっくん!!

……て、どうしたの…?」




「…………見張りがいねぇ…」



「あ……ほんとだ……

一人ぐらい居ても良いはずなのに………ん?」



は周りを見渡しているとある事に気付く…後ろから音がする

 




「…あっくん…あれ…」



に呼ばれ、亜久津も振り返ると

エレベーターがいつの間にか上に戻り、更にまた、ここへ下りて来ていた




「あっくん…」


「…隠れるぞ」




不安げなの手を引いてすぐ傍にあった

船に積む荷物だろうか…

大きな木の箱の裏に二人で隠れる






「「……………」」





二人は箱と箱の隙間からエレベーターのドアをジッと見つめる…




扉の上のランプが、この階に着く…
 


 



[ピーンポーン]

 

 

 




と、音が鳴りゆっくりドアが開く…



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレベーターから降りてきたのは…

 

 

 

 

 

 

 

 



見覚えのある姿

 

 

 

 

 

 

 

 

「…せん…ぱい…?」



「!!………か…?」





「ッ先輩!!皆!!」






は急いで手塚達のもとへ向かう

亜久津も隠れるのを止めると、

嬉しそうにまた出会えた仲間へ駆け寄るに小さく安堵の溜息を吐いた



がエレベーター内を見ると、上で別れた皆がいて…

傷を負ってはいるが、どうにか全員無事なようだった…

 

 

 



――しかし、皆の顔を確認したは一人いない事に気付く

 

 

 




「ね…ねぇっキヨは!?

エレベーターの前に居なかった!?」



その言葉に全員顔を見合わせるが、全員首を横に降る




「そんな……キヨ……

(どこに行ったの…?)」



「千石がどうかしたのか…?

達と行動していた筈だが…」



「…はい……実は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




は別れてからここに来るまでの出来事を全て伝え…

不安げに全員の顔を見た…。



「そうか…そんな事が……

――しかし、ある意味では俺達を裏切ったわけではない」


「!キヨ…のこと…許してもらえるんですか…?」

 


「勿論!おかげで俺達エレベーター使えたしにゃ♪」



「もしかしたら外に避難しているかもしれません…

一先ずここから脱出しましょう。」


「英二…チョタ……そう…だね…。

時間もないし…急ごう!!」

 



全員止めてある船へ向かう…


思っていた物よりずっと大きく、乗客船のような大きさだ…


外へ船を出す道は、大きな扉に塞がれている




「階段から早く上がれ!!

エレベーターがまた動きだした!!」




急いではしごのような階段を上がると手塚と乾は操縦室へ向かい



跡部は塞いでいる大きな扉を開くために、レバーを上げに走る…




他の全員が船内へ入る中

は後甲板へ向かい、この階へ降りてくるエレベーターを見た




「もうすぐエレベーターがこっちに着きます!」




その声が聞こえたのか…


[ゴゴゴゴゴゴゴゴッ]
っと重たい扉が開き始める


…しかし、それとほぼ同時に…




「止まれー―ッ!!」

 




エレベーターの方から静止の声が聞こえたかと思うと

船に向かって発砲してくる…



[カンッカンッカンッ]と鉄工板に銃弾が当たり、金属音を鳴らす



跡部が船に乗ったのを確認した後

は前甲板へと走って移動した






「っおい!!」


「…あ!あっくん♪」



「危ねぇからさっさと戻って来い!!」




亜久津の焦っている様子とは裏腹に

は笑顔を向けると前方を見つめる…



扉は調度、完全に開かれ、

右へと流れる川と、月に照らされて薄暗く見える島が現れた



「出れる!!」

 




の声が聞こえたかの様に、船がゆっくりと前進し始める…



前からの風に髪がなびき、は手で軽く押さえた



船の先端が川へ出ると同時に、水の流れに沿って右へ向かう…

 

 


すると、はある事に気付いた

 

 

 

 

 




「ここは……島と島の間の川……?」

 

 

 

 

 




船は両側にある陸地の少し上に甲板が出た状態で進む…



進むにつれ、二つの島を繋いでいた橋が自動的に上がっていき、船を通す…



後ろから近付いてきた亜久津には顔を向ける…


亜久津はの横に立つと同じく前方の橋を見る



「あっくん、橋が……」



「誰かが操作してんだろ…差し詰めお前の所のセンコーか……」



「…竜崎先生…

…………ん?……ねぇ、あそこに何か…」




ふと右の島を見ると、前の暗闇の奥に何かが動いている

 




「ほらっあそこ!」

 



そう言ってが指を指した方を亜久津も見る…

 



「なん…だろ……」

 




それを確かめようとは船の右側へ移動する…

 

 

 



―暗くて良く見えない…―

 

 

 




は船から身を乗り出してそれを見ようと目を凝らす…

 

 

 

 

 

 

 

 



「……………
!!

 

 

 

 

 

 




は自分の目を疑った…

 


何も言えず目でそれを追う…

 



動かないに亜久津は近寄る…

 



それでも視線は何かに向けられていて…

 




「…おい……?」

 

 

 



「……………ョ…」

 

 

 

 



「あ?…どうし…」

 

 

 

 



聞き取れずもう一度聞く…

 

 


今度はハッキリと…は確かめるように言った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「…キ……ヨ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「!?」

 




その言葉に驚き、亜久津も動いている何かを見る

 




「……キ……ヨ………
キヨっ!!

 

 

 

 




船の上から叫ぶ……

 


 

 


するとそれは止まり、振り返る…

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


…船が、近付いて行く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「――っキヨ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



「………………ちゃん……?」

 

 

 

 

 

 

 

 




船のライトでそれ……千石が照らされ…


足や肩に傷を負っているのが解る…

 



「キヨ…っ…よかッ……」



「何…で…こっちに……船が…」


「水の流れがこう流れてるからな…」



「…亜久…津……」



「キヨッ早く船に乗って!

そこからならまだ飛び乗れるよ!!」



「………駄目…だよ…俺は皆を裏切ったんだ…今更…」

 


「今更じゃないよ!

キヨがエレベーターを使えるようにしてくれたから私達皆助かったんだよ!

それなのにッ…
それなのにキヨが助からないのはおかしいよ!!」

 

 


…ちゃん……」

 

 



「テメェ一人置いて行く事自体面倒だろ…さっさと乗れ」

 

 


「亜久津……」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「…ね?一緒に、帰ろ…キヨ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




は微笑み、船から千石へ右手を延ばす…

 

 

 




「……っ…うんっ」

 


 

 



千石は船に駆け寄るとの手を取る…



と同時に船が島から離れ始め、千石の足が地面から離れる…

 

 




「!?……っ」

 



急な重さに堪えられず手が滑りそうになった時、


亜久津が千石の手首を掴む

 


「あっくん!?」



「一々無茶な事すんじゃねぇ…」



「えへへ、ゴメン☆」

 


 


そう笑うと掴んだその手を、二人で引き上げる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










「…ギリギリ〜…」

 




船が離れたのは、最後から二つ目の橋の部分に差し掛かり、


川幅が広くなった為だったようだ…

 


 


三人でその場に座り込み…

 

 

 

 



「「「ハァ…」」」

 

 

 



と、三人同時に溜息を吐いて、それぞれ後ろに倒れる…

 



「はぁ〜…キヨの所為で疲れたぁ〜…」



「ぇえ!?…俺の所為〜…?」


「それ以外ねぇだろ…」



「でもさ……こうやって、三人でまた会えたのは…

やっぱり俺がラッキーだからじゃない…?」



「…そう…かなぁ……?」



「……知るか…」



「えー…亜久津冷たーい…!!


……というか…」

 

 




「「…疲れた」」

 

 




「………俺が言おうとしたのに…。」

 


「あははは♪………あ…」

 



「どうしたの?ちゃん…?」

 

 

 

 



「最後の…橋……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




橋が船を避けるように上がり…最後の橋は、大海へ船を通す……


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



…その瞬間

 

 

 

 

 

 



――バアアァア…ン――ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 





「「「!?」」」


 

 


三人は立ち上がり、音がした方を見ると


学校が爆音を島に響かせながら燃えている…

 

 

 

 




「学校が……」

 

 

 

 




幾度かの爆音と共に崩れていく学校を、は悲しげな瞳で見つめる

 

 

 

 

 




「竜崎先生…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




きっと、先生しかいない……

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 



学校の炎は近くの森へと移り始める…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 


悪夢の様な三日間…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



夢のようで、夢ではないイマ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



これが現実なのだと頭で確かめながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



唯、暗闇の中で赤々と燃えているその島を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



私達は、見えなくなるまで見つめていた…

 

 

 

 

 

 

 













 

 

 


































 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

―END―