「…大丈夫か?


「…うん…がっ君は?」


「…まあ…大丈夫…」


「………ねぇがっ君…」


「…ん?…どうかしたか?」


「…………まだ…?」


「………多分まだ」


「行き方…知ってる…?」


「一応あってる筈」


「…………一応…?」




…あの場所から歩き始めて既に数時間は経ったと思われる…

なのにまだ目的の場所に着かない



流石に、痺れを切らしてきた

不安そうな顔で岳人を見るが

岳人も実際地図上で知っているだけで

それの場所に行ったわけではないので

岳人自身も徐々に不安がこみ上げてくる



「多分…あってると思うんだけど…」


「多分じゃダメだよぉ〜…(泣)

……そーいえば、私に会う前はどうしてた?

……誰かに…会った…?」



の言葉に、岳人は顔を上げると

困った様に目を逸らした



「……………」


「……がっ…君…?」


「……会った…。…けど……」



言いかけて下を向く…

その様子には何か違和感を感じ

「けど…?」と、聞き返す



「……俺は…学校を出てからこっちの方…

橋の方とは反対に行ったんだ…」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「…やっべ…道間違えた…?

………っどこだよ侑士ぃ〜(泣)」



方位磁石をみても侑士に言われた方向とは違う…

自分より先に出た侑士は…


『南へ真っ直ぐ歩いて来るんや…

そこで合流できる筈やから…

予定時間過ぎたら先行くさかい

迷ったりせーへんよーにな』


と、言って出て行ってしまった…


今自分が進んでいる方向は西



「ゼッテェ怒ってんだろーな…」



とっくに言われた予定時間は過ぎていて…

戻るのも面倒なのでそのまま進んでいる…



「………………」



一人の所為か、無意識に物事を考えてしまう。

今考えつく事と言えばこのゲームの事。

それ以外…今は他の事より強烈な事はない…


このゲームは、簡単に言えば

たかがくじ引きごときで決められた

自分達が生きる為の殺し合い…


仲間を、親友を、ライバル達を殺して

自分ただ一人が生き残る為の…

狂ったゲーム。



皆生きたいから他人を殺す。

この狂ってるゲームに乗る。

“死”という恐怖から逃れる為に殺すのだろうか…?

それこそ、人間は最終的に誰でも死ぬから

今生きて帰ったっていつかは…



「……でも……皆そんな事解ってるはず…だもんな…」



死にたくないから、

死ぬのが怖いから、

っていうのもあるだろうけど…



生きて、会いたい人がいるから相手を殺す奴だって、

多分、居ると思う…

実際俺だってそうだし…

何かをするには生きる以外方法はない…

だから、そいつに会う為にこのゲームに乗る…?


…でも、乗ったら…

もし俺がゲームに乗ったら…

パートナーの侑士まで…

殺す事になるのだろう…きっと。

…いや、殺さなくてはならなくなるだろう…



「……………

…やっぱ…侑士は殺せねぇ…

殺したくねぇな…

大切なパートナーだし…親友…だし。」



大体、想像したって到底自分にはそんな勇気も行動力もない…



「それに……そんなの勇気なんて呼べねぇーよな…」



空を見上げ…溜息をつく…

今まで空なんて同じだと思っていたのに

今の状況の所為か、全然違う物に見える



「今は……歩いて、進むしか道はない…か」



また前を向き歩く、

妙な気持ちで落ち着かない…

今が現実だと、捉えられないからであろうか…



「……と、そういや武器…

一応調べといた方が良いよな」



歩きながらリュックを前によこし、

手探りでリュックの中を探す



[ガサガサ…コツッ…]




「……ん…?」




金属質の物が指先にあたった…

それを掴み一気に引っ張り出すと……


 


「………フライ…パン……?」

 




少し呆然として、はっ!と意識を戻す



「……って…何処が武器なんだよ!!

身を守る事もできねぇじゃん!!」



フライパンで防いだり殴れとも言うのだろうか…

岳人はフライパンを地面にたたき付け

『っ…クッソォー…』と地面にしゃがみ込む



「…………今誰かに会ったらヤベェかな……」



身を守る物が何一つない状態だ…

今誰かに襲われたら……

そう考えると、こんな所にやすやす座っている暇はない…



「………行く…か…」



リュックをしょい直しまた歩き始める



その日、放送によって初めて痛感した…

…これが、夢や嘘ではない事…


そして、二日目朝の放送で…

初めて同じ学校の名前が呼ばれた……



「っ誰だよ!!誰が殺したんだよ!!!」



−自分はまだ…誰かに会ってさえいないというのに…−




「…っなんでだよ……」

 



一緒にテニスをやっていた仲間じゃねーのかよ…

なんでそんな簡単に殺せるんだよっ……

…どうしてッ…!!…どう…して…っ……

 





一日が過ぎるのが速かった…

二日目…何体もの死体を見た…

足を何かで叩き潰され、顔の原形を留めていないモノ、

首と胴が離れているモノ、

崖沿いには海に飛び込み自殺をしたとみられるモノ…


もう…壊れてるのか…皆…

誰ひとり…正気ではないのかもな…

 



それなら…後はもう…

 

 





俺は……

 

 

 

 





そう思ったとき、

誰かが話す声が耳に入った。


「(…誰か……近くにいるのか…?

…侑士…かも一応行ってみるか…)」



なるべく音を起てないように声のする方へ歩く…



「……で、連絡…ぃ…」
「…ぁ……後は…み…」



「(…聞き取りにくい…もう少し近
づ…)」



近くへ寄ろうと足を踏み出した瞬間

下にあった枝を踏み[パキッ]と音をだす



「(っ!?…やべっ)」



逃げようと体を翻すが

足を出すよりも先に背後から一発の銃声と

撃ったであろう本人の声がする。



「動くな!!こっちは武器を持ってる!!」



[ザッザッ…]と草を踏む音が聞こえ近付いてくる…



「(…侑士の声じゃなかった…

…けど、ヤベェな…この状況…)」



[……ザッザッザ]



真後ろで足音が止まる…



「…お前は…」



「…俺が見るに氷帝の三年レギュラー、向日岳人…

忍足侑士とダブルスを組んでいた…」


「…そうか……こちらを向け…」



どこかで聞いた声だ…と思いながらゆっくり後ろを振り返る…



「!?……お前等は…」


「青学三年、手塚国光」


「同じく、三年の乾貞治だ…

そっちが仕掛けてこなきゃ攻撃するつもりはない…

しかし少しでも怪しい動きをすれば…

言わなくても解るよな?」



「ああ解ってる…俺は今武器持ってねーし

身を守るもん持ってねーから

反撃の仕様もねぇよ」


「…リュックに入っていなかったのか…?」


「………フライパンだったから捨てたんだよ…

ついでに言うと人に会ったのはお前等が初めてだよ。

昨日はゲームが始ってから誰かとすれ違う事だってなかったし…」


「…どう思う…乾…」


「本当だろう…目に迷いがない、

嘘も多分だがついていないだろう…」


「だが一応リュックの中身を見ておこう…

リュックを見せてもらうぞ…?

こちらの地面に投げて

両手を上に上げておいてくれ。

……疑っているわけではないんだがな。」


「べつに良いぜ……よっと…」



持っていたリュックを地面へ投げる。

乾は落とされたとリュックを開き、

中を確認すると岳人を見てリュックを差し出す



「確認できた…疑ってすまない…」


「俺達はある作戦を考えて話していた、それをばらされると困るからな…

逃がすわけにはいかなかったんだ…」


「いいけど…その作戦ってなんだよ…?」



手塚は乾を見て、頷いたのを見ると話始める



「簡潔に言えばこのゲームを終わらせ島を脱出する方法だ。」


「島を脱出!?そんな事出来るのかよ!?」


「ああ…この島の知りたい部分を一通り歩き、

色々な情報とそれを実行する為の仲間ができた。

…今現在、何人生きているかは解らない…

ここから東南東辺りの、

山のしたにある家に夜の7時〜8時にかけて集合し、

作戦を説明、実行する…。」


「……成功する確率はあんのかよ…?」


「それは解らない…

しかし、俺達がこれをやるのは意味があり…

目的が同じ仲間でやる作戦だ…

作戦がもれなければ成功する確率は高い…」


「…目的…?」


「…あいつを…を死なせない為の作戦だ…

同意した仲間は皆それが目的であり同じ考えだ…」


「………」



そうだった…

このゲームの参加者は全員の事を…

俺もだけど……こいつの言い方からするに、

の為だけに起てた作戦…か…

確かに…学校の違う俺達が団結するには充分だ…



の為…か…」



ふ…っと目を閉じる…

 

 



『がっ君!一緒に練習しよ〜☆』



『エージに負けないぐらい飛べるようになったら

そうだなぁ〜…

その時はがっ君にお弁当作る!

って、学校違うから無理かぁ…

あ!じゃあ二人でピクニック行こ!!』


『学校違くっても…み〜んな仲間デス☆なんてね♪』

 

 

 



小さく笑い、目を開ける



「いいぜ、俺もその話乗らせてもらうからな!」


「(!!)あ…ああ!宜しく頼む。

もしどこかで会ったらを案内してやってほしい…頼めるか…?」


「ああ解った!!」



[ピ・ピ・ピ…]



機械音がいきなり鳴りだす。

どうやら乾の持っているそれから音がしているようで…



「どうした乾…」


「ああ…また、誰かが死んだようだ……」



どうやら探知器のようだ



「…誰だか解るか…?」


「今調べる……」



[ピッ…ピピッ…ピ…]



「……手塚……」


「なんだ……?」


「…………不二が………死んだ…」


「不二が!?」



「その近くに聖ルドルフの観月と

不二の弟も死んでいる…」


「……そう…か…」


「そいつ等も仲間だったのか…?」


「いや…不二も仲間だったんだが……

弟を探しに行くと言って…………」


「一先ず…を見つけたら連れて来てくれ…

あいつがいないと、この作戦も意味がない…」


「ああ…解った…」


「宜しく頼む…」

それからまた別れ、

言われた場所に向かっている途中で…



…侑士に会えた…



けれどそれは嫌な形で…

侑士からすべてを聞かされ、

越前とに出会って…

また目的の場所へ向かっている…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



「…て、ところだ…」


「……………」


「……?」


「っごめ…ん…」


「ごめんって…なんで泣いてんだ…?」


「思い出したくない…光景…っ

思い出させちゃ…っ

ごめ…っ」


「…謝んなよ…べつに

が何かしたわけじゃねーじゃん…」


「っでも!…でもっ……」


「泣くなって!!

お前が悪いわけでもっ…

誰が悪いわけでもねーんだからよ…」


「……う…んっ……」


「…ほら…泣くなよ、が泣いてると

俺がなんかしたんじゃないかって

あいつらに怪しまれるんだからよ」


「うんっ…でも着くまでには泣き止んでるもんっ」


「じゃあ泣き止めよ…?」


「…………え…?」

 


「もう着いたからな」


 

 

 


目の前には…二件の廃墟が建っていた……