「千石清純。お前には監視をしてもらう。」
荷物とリュックを渡されて校舎から出てすぐ、
出口に現れた政府の奴らに連れられて、学校の裏口からまた校舎に入り、
そこで唐突に告げられた。
「………どうゆう、意味?」
「言った通りだ。お前には監視役をしてもらう」
繰り返された言葉は、そのまま、その意味と一緒に耳へ入ってくる…
ピリピリと重苦しい空気に一瞬息を吸う事さえ忘れかけるが、
どうにかして現状を把握する為に言葉を搾り出す
「それ…は、参加者内の“スパイ”って事…?」
「そうだ。
監視役はこの3日間、参加者が島からの脱走・政府への反逆
及び、それらの計画を企てる等のケースを想定し、
確実に防ぐ為に今回のBRから新たに設けたものだ。」
「…でも、監視役だって参加するんだから、すぐ死んだら意味ないんじゃ…」
「監視役を受けると言うのなら、この3日間“なるべく”生存出来るよう
首の爆弾を偽物と変え、危険区域内も動けるようにさせてやる。
代わりに、本部に繋がる携帯電話を一つ所持し、必ず一日に一度以上の連絡をしろ。
…その際、他人に見られないよう注意しておけ、
もし、他の参加者に、知られる・教える等“監視役”の存在を知られた場合
お前とその参加者を殺害する。」
「ッ―――それ…は……俺が…“監視役”を受けなかったとしても…」
「………………」
返って来たのは無言の威圧感と
真っ黒な銃口が自分に向けられる音
「――ただし、3日間最後の二人になる迄その任務を真っ当し、生き残れたなら、
特例として、表向きは死亡とするが“政府の管理課の下で”生活出来る。
――考えろ。自らが生き残るにはどうするのが一番の選択肢かを。」
向けられる鋭い眼と向けられたままの銃口
――これは…俺にしては珍しくアンラッキー、だね…。
偽物の首輪爆弾も遠隔操作で爆発するかもしれないし、
最後迄生き残ったところで、本当に生かしておくかどうかも解らない。
…もし本当だったとしても、外出なんて許してもらえないだろうしさ…。
それに…何より…
―彼女の居ない世界なんて、俺にとったら生きてても意味のない世界―
だったら、始めっから皆が考えてくれるかもしれない計画を
わざわざ不利にするような事はしたくない。
きっとその計画は、
彼女を生かす為のモノだから。
……って事は俺、ここでオシマイかー…
まだコレが始まってから、ちゃんに会えてもいないのに…
選りにも選って、政府と繋がる参加者内のスパイだなんて…
ホント、なんでこうゆう時に限って俺が選ばれちゃうのか……
……ん?
政府と、繋がりを…?
「ね…ねえっ……なんで俺…が、選ばれたの…?」
「唯の抽選でたまたまお前が選ばれただけだ。
――そんな事はどうでも良い。
受けるか、受けないのか、言え。」
抽選で、たまたま俺が選ばれた?
政府と参加者が唯一繋がる監視役を?
あぁ、もう…こんな時にまで
“ラッキー” だなんて!
噴き出しそうな笑いを抑えようとするが
零れる笑みは抑えられない
「…勿論、受けるよ。
受けない筈ないじゃんか。
こんな…
もの凄く良い境遇 」
キミ達の言う通り、スパイになってあげるよ。
“政府内の” ね。