バレンタインデー…

 

女の子が好きな人に

チョコやクッキー…

あとは手編みのマフラーとか…?



…そんな自分の心の込もった物を渡して

自分の想いを伝える日…




毎年、毎年あげてた手作りの

甘すぎないチョコレート…


バレンタインっていうのは

好きな人にあげるのが当たり前で…。


私だって、出会ってから毎年あげてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年は…




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あげない事にしてみた。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 思ったり答えたり ―





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはよーちゃん☆」


「おはよ、キヨ☆」



学校前…

朝から明るく挨拶してくる千石――キヨに

も笑顔で返す。

普通ならソコで会話が続くのだが

笑顔で固まったまま

二人共言葉を続けない。


 

 


「……………………」

 

 



「……………………」

 

 

 



「…ちゃん、アレは?」


 

 

挨拶したかと思えば

キヨは何か言いたげな顔での顔を覗き込み

“アレ”を催促し出す



「アレって?」



そんなキヨに、はあくまで解らないと言うように

笑顔のまま返事をする

そんなにキヨは驚いた様に

声を張り上げる



「バレンタインに女の子から

男の子にあげるのって言ったら

一つしかないでしょ!?」


「さぁ?何の事やら?

大体、キヨは私以外から沢山貰うんだから

態々私から催促しなくったっていいでしょ?」


ちゃんアレが何か解ってるじゃん!!

というかちゃんから貰いたいの!!

毎年例え義理でも

ちゃんから貰えるのは嬉しいのにっ

今年は義理もくれないの!?」


「……そんな泣きそうな顔しなくても…(汗)」



うるうると瞳を潤ませ

本当に泣きそうな顔をしているキヨに

は溜息を吐く…


このままキヨを放置しても

この後、“アレ”を渡すまで

ずっと着いて来る気がするので

は仕方なく渡さない理由をキヨに話す事にした…

寧ろ話さないと

自分の“実験”に差し支えるので

話す気だったが…

それはあえて心にしまう。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、いうわけで

今年はキヨにもバレンタインの義理チョコはなし!」


「やーーーだーーーーっ!!!」


「ヤダじゃないの。」


「いいじゃん!

亜久津にだけあげないで

俺にくれたって良いじゃん!!」


「だーめ。

本命のあっくんにあげないのに

義理のキヨにあげるような事はしないの!」



怒られたキヨは

まだ少し納得しない顔をしながら

を見つめる



「……ねぇ、ホントに今年はくれないの…?」


「あーげーまーせーんっ!

……そろそろ諦めようよキヨ…。」


「だって…ちゃんのチョコレート…」


「今年の一回ぐらいは我慢してってば…

私の為に…ね?」


「……ちゃんの…為…?」


「うん、私の為!」



その言葉にキヨは少し考えた後…

小さく溜息を吐き、

「解ったよ…」と肩を下げる



「ま、俺も亜久津の反応が気にならない訳でもないし…

出来れば俺もその実験に

混ざりたいんだけど…いい?」


「ん〜〜……

今年は義理チョコもあげれないし…

仕方ない!

今回はキヨも混ぜてあげる☆

…って、言うか混ざってもらおうと想ってた(笑)」



笑いながら返す

キヨも笑顔で返す



「(まったく…こっちの気も知らないで…)」



実験仲間が増えた事で

嬉しそうに学校へ入っていくの背中を見つつ

キヨは気付かれないように溜息を吐いた…


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、俺はちゃんがさっき言った通りに

行動しておけばいいの?」


「うん☆

よろしくね♪」


「リョーカイ☆」



校内でそれぞれの教室に分かれた二人は

これから行う作戦に

心を躍らせるのだった…



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン…


 

 


お昼を知らせる鐘が鳴る…



いつもの様に屋上で一人

煙草を吸っている亜久津の下へ

が向かう



「やっほーあっくん☆」



勢いよく扉を開けたと同時に

大きな声で亜久津へ話しかけた

亜久津は溜息を吐くと

吸っていた煙草を地面へ押し付ける



「また授業サボって〜

あっくんが居ないと私が当てられるんだよぉ?」


「知るか。」


「知ってて☆

というかね、今日さ

何の日かあっくん知ってる?」


「………何かあんのかよ」


「あ、知らないなら良いの☆

気にしないで☆

さ、お弁当食べよ♪」



そう言ってお弁当を広げる

亜久津は疑問を抱きながらも

後ろにあるフェンスに寄りかかり

また、いつものように

楽しげにし始めるの話に

静かに耳を傾けた…





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン……

 

 

 




「あ…鐘鳴っちゃった…」



学校に響く鐘の音には話を止めると

残念そうにお弁当を持ち

立ち上がって伸びをして

いつもの様に亜久津に

「また放課後ね♪」

と、声をかけて屋上の扉へ向かう…



「………おい」


「ん?

どーかした?あっくん…」



屋上から出るところを呼び止められ

は亜久津に振り返ると

キョトンとした顔で亜久津を見る



「…何があんだよ」


「何って?」


「テメェが来た時になんか言ってただろ」


「………ぁあ!あれ?

気にしないでって☆

別に大した事じゃないし…

あっくんが気にする様な事じゃないよ☆」


「………………」



妙に引っかかるの言葉と態度に

亜久津は眉間に皺を寄せる…


そんな亜久津には笑みを浮かべると

たった一言



「キヨなら、絶対知ってると思うけどね♪」


「おい、どういう意…」


「それじゃ♪

授業遅れちゃうから☆

私が居なくて寂しいからって

あんまり煙草吸っちゃダメだよ〜?」


「誰がだ!!」



片手をひらひらと振りながら

階段を下りて行った

亜久津は一人、舌打ちをする…



―まんまと誤魔化された―




が妙に誤魔化す時は

必ず何か…

隠し事か何かがある時…


今回も何かある事は確かだが

それが何なのかは解らない…


ソレを知る為の手がかりは……



「ッチ…」



亜久津はポケットから携帯を取り出すと

慣れない手つきで携帯を操作する…



新規作成で千石宛に…

ただ一言「来い」とだけ書いて送信した。


 

 

 

 

「あー―くー―つ!!」



静かな屋上に千石の声が響く…

少し怒ったような口調で

千石は亜久津を呼ぶと

フェンスに寄りかかっている亜久津の隣に座る



「ねぇ亜久津…解ってる?

今、授業中だよ?

授業中なんだよ?

それなのに俺の携帯がいきなり鳴り出したんだよ!?

ねぇっこのわけ解る!?

解るよね亜久津!?」



隣で訴えるように問いかけてくる千石から

ウザそうに顔を背けると

千石は溜息と共に

ぶつぶつと愚痴を呟く…



「…俺…こう見えても先生に人気なのにな…

これでも信頼されてたのにな…

あ〜あ…携帯が鳴った時の

あの先生の顔…

思い出すだけでも

俺のか弱い心がズキズキするよぉ…」


「ウゼェ」


「亜久津の所為でショ!?

……大体、元はと言えば

亜久津がメールなんてしてこなきゃ…

…って、そうだ、亜久津。

亜久津が来いって言ったから来たんだけど

なんか用なの?

亜久津がメールで呼び出しなんて

珍しいと思って

授業をサボって来たんだけど…」


「結局テメェもサボりに来てんじゃねぇか」


「何ソレ!?

俺はわざわざ亜久津の呼び出しに

謙虚に答えただけなのに!」


「誰も授業中に来いだなんて

言ってねぇだろ」


「………屁理屈…」


「知るか。

………今日。」


「へ?あ、今日?

今日がどうかした?」


「なんかあんのかよ…」


「今日?

……って!ぇえ!?

亜久津!今日が何の日か解らないの!?」



驚きで軽く後づ去る千石を

亜久津は無言で睨む



「あーーっと!!

怒らないでよ?

本当に驚いたんだから…

……にしても…

本当に解らないの…?」


「知らねぇから

テメェに聞いてんだろーが」


「マ…マジ…?

……って、亜久津がジョーク言う筈ないもんね…

でも、ほら、この時期…

ちゃんに何か貰ったりとか…

そーゆー記憶…ない?」



千石の問いかけに

亜久津は少し考える



「あの…亜久津…?

誕生日がまだなのは解ってるからね?」


「うんな事解ってんだよ!」


「だって今放っておいたら

絶対誕生日の事考えてそうだったから!!」


「考えねぇよ!!」



…実は考えていた亜久津だが

そんな事は絶対に言わない…(笑)



「大体っ遠まわしな言い方してねぇで

さっさとハッキリ言えよ!!」


「もう…解ったよ…

今日は2月の14日。

つまり、バレンタインデーだよ?」


「………………」



千石の言葉に固まる亜久津…



「……え…?

もしかしてバレンタイン知らないとか…?」


「テメェ、馬鹿にしてんのか…?」


「してないっしてない!!

だって亜久津が固まるからっ……

と、いうかなんでいきなり今日の事聞いたの?」


「…………………」



フとが脳裏を過ぎる…


そんな亜久津を見抜いたように

千石は「ははーん…」と自分の顎に手をやる



「さては、ちゃんだなぁ〜?

俺の予想では…

ちゃんに今日の事聞かれて

解らなくて、俺に聞いたのかぁ〜…

……ん?て、事は亜久津…

今回まだチョコレート貰ってない?」


「……テメェはどうなんだよ」


「俺?それがさぁ〜…

どうしてか解らないけど

なんかちゃん

今年チョコレートくれないんだよぉ…

理由聞いても教えてくれないしさ〜…

亜久津は貰ってるだろうって思ってたんだけど…

まさか亜久津も貰ってないなんて…

今年は誰にもあげないのかなぁ…

……ハッ!もしかして

他校とかに好きな人が出来て

今年はその人にだけ〜vVとか!?」



大げさなのかどうかは解らないが

一人騒ぐ千石に

亜久津はまた睨みつける…



「そんな睨まないでよ…

これは俺の唯の憶測!

ホントかどうかなんて俺は知らないし…

ちゃんからそんな話聞いたわけでもないし…

てか多分、俺が聞いても教えてくんないし…」



肩を落として

大きく溜息を吐くと

千石は首を振って屋上の出入り口に向かう



「きっと亜久津が聞けばちゃん…

その理由教えてくれんじゃない?

俺にはさっぱりサッパリ。

……でも、亜久津…」



校舎の中――扉を背にして

千石は足を止める


亜久津は扉の隙間から見える

千石の背中を煙草を吸いながら見る



ちゃん、もしかしたら傷ついたのかもよ?

毎年、亜久津に手作りチョコあげても

亜久津が解ってなきゃ…

チョコに込められた意味っていうか…

その想いって奴をさ」


「……………」



それだけ言うと、

千石は手を振って

そのまま授業の終わりそうな教室へと戻っていく…



また屋上で一人になった亜久津は

千石の言葉にイラつきを覚え、

片手で髪を掻き揚げると

吸い始めたばかりの煙草を


地面へと押し付けた…





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっくーーんvvV」



夕暮れ時…

スクールバックを持って

が屋上へ顔を出す…

いつも一緒に屋上へ来る筈の千石の姿はない…



「ごめんね〜、ちょっと友達と色々やってたら

こんな時間になっちゃってさ〜…

今日だけだから許してね♪」



“今日だけ”が妙に強調されている気がした…

いや、今の亜久津にはそう聞こえた。


自分の目の前に立って

「帰らないの〜?」と

首をかしげている

亜久津は座ったまま見上げる



「?あっくん…?」


「なんで言わなかったんだよ」


「へ…?」


「今日。テメェが言ってたのは

“バレンタイン”だろうが…」


「…え〜っと…

キヨから聞いた…?」



亜久津から目線を逸らし

苦笑いを浮かべる

亜久津は続ける…



「…俺がそんな行事に興味がねぇのは

テメェだって知ってんだろ…」


「うん、知ってるよ☆」


「………じゃあなんで

そうやって今日の事を遠まわしに

気付かせようとしてんだよ…」


「あ〜…やっぱりなんか…

違和感あった…?」


「………………」



本人は無意識だったのか…

それとも演技なのか…

どちらにせよ“バレンタイン”を

気付いてほしがってた事に代わりはない。



何か考え込んでる

亜久津はまた声をかける



「何がしたいんだよ」


「う?何って?」


「テメェは俺に何かしてほしいから

そうやって気付かせようとしてんじゃねぇのかよ」


「……何か…してほしいわけじゃ…

ないんだけどな…一応。」



曖昧な返事をしてくる

亜久津は眉間に皺を寄せる…


は少し悩んだ後…

その口を開く



「“してほしい”って言うか

その行動を見せてほしい?

いや、言ってほしい?

う〜〜ん…」


「………………」



また曖昧な言葉に

亜久津は溜息を吐くと

再度悩んでいる

「ハッキリしろ」と声をかける



「ハッキリって……

う〜〜……言っても良いのかなぁ…」


「言えよ、めんどくせぇ…」


「じゃあ言っちゃうよ?

後で「は?」って顔しないでね?」


「しねぇからさっさと言え」


「……ほしい?」


「………あ?」


「だ・か・ら!

チョコレート、ほしい?」


「………………」


「ぁあ!

そうやって「は?」みたいな顔する!」


「いや、つーかテメェの言ってる意味が解んねぇ」


「うぅ〜〜っ

だーかーらっ私の手作りチョコ欲しい!?」



半場投げやり状態で

聞いてくるに亜久津は

ますます、「解らない」と言う風に眉を顰める



「っ〜〜〜〜
///

……ハァ…もう…なんていうか…うん…

ゴメン、あっくん…」


「あ?

さっきっから何なんだよテメェは…」



最終的に何故か謝ってきた

亜久津は益々困惑する…


もう諦めたように肩を落とした

亜久津は頭に?を浮かべる


は溜息を吐きながら

座ってる亜久津の服を引っ張り

帰ろうと急かす



「だから、結局テメェは何がしたかったんだよ」


「ううん、もう、うん、私が馬鹿だっただけだから

あっくんは気にしないで…

とりあえず、日、沈んじゃうから帰ろ?」



いかにも落ち込んでる

亜久津は少し考えながら立ち上がる


は亜久津が立ち上がったのを確認すると

その少し前を歩いて

屋上の出入り口へ向かう…



「(あーあ…やっぱり、かぁ…)」



小さく溜息を吐きながら

が屋上の扉を開けると

不意に、頭に重みが掛かり

自分を横切る影に

それが亜久津で、自分の頭に乗せられているのが

亜久津の大きな手だと解る



「………あっくん…?」



夕日で少しオレンジがかった

自分の少し前にある亜久津の背中へ

が目を向けると

亜久津は階段前で止まる


 


「…意味なんて解ってんだよ…」

 

 



「…… へ …?」

 

 

 



その言葉に呆然と見てくる

亜久津は何処から取り出したのか…

後ろ向きのまま一枚の苺ガムを投げる



「わっ…!

――え…?…ガ…ム…?」


「……………」



どうにかガムを受け取ると

はそれを手に持ったまま

首を傾げる…



「…おい、帰んだろーが…」


「え?あっうん!」



さっさと階段を下りていく亜久津に

は慌てて

その後を着いて行く…

 

 

 

 

 

 


の手には

一枚の苺ガム……


 

 

 

 

 

 

 

 

 




その意味を知ったのは

その夜、キヨに報告メールをしてから…










 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜あとがき〜


一日速くてゴメンなさいっ


いえ、14日になる時間帯に

多分家に居れないので

速いですが更新させていただきました(汗)


…ええっとですね?

とりあえずとっても説明が必要な文章ですみません(汗)


大まかに言っちゃうと


ヒロインちゃんは、バレンタインのチョコを

あっくんに催促されたかったのです。


キヨは、まぁ…

使いっぱみたいな感じで…(酷)


あっくんは、バレンタインの事なんて

すっかり忘れていたのですが

キヨに言われて思い出して。

それで…

まぁ、ヒロインちゃんの気持ちは解ってるぞ〜、と。

ベタですが、外国では男の子から

女の子にお菓子をあげますので…



まぁ、えぇ、こうなりました。(意味不明)


意味の解らない文章ですが

どうかご勘弁ください(泣)


それでは、ステキなバレンタインを……