「雨…止まないかなぁ…」 窓から、水が落ちてくる薄暗い空を見上げ は小さく呟いた… 「今日、一日中雨だっつってただろうが」 の呟きに返す様にして 何かの雑誌を読んでいる亜久津が答えた…
12月25日… そう、今日はクリスマス… 恋人達にとっては一大イベントであり 外は眩いばかりのイルミネーションと クリスマスの音楽で溢れている… そんなロマンチックな中で 好きな人とデートをするのは 特に女の子にとって夢の様な時間だろう…
しかし…
ザァァァァァ……
「ハァ……」 今日は生憎の雨。 きっと殆どのカップルが 今日ほど雨を怨んだ事はないだろう。 そしても…その中の一人であり…。 今日は仕方なく… 亜久津の部屋で過ごす事となった… 「『アーメアーメ、ふーれふーれ、もっと降れー♪』 ……だなんてバカな曲作ったのは 一体何処の誰だろーね、あっくん。」 「知るか。」 「…むぅ……」 せっかくのクリスマスだというのに外は雨。 雨だと気分まで沈んでいく… はおもむろに 自分の携帯を取り出すと “山下達郎”の“クリスマス・イウ゛”を流した… 『きっと君はこ〜な〜い… 一人きりのクリスマス・イヴ……』 「「……………」」 亜久津の部屋にその曲が 静かに流れていく… 「…………どうしようあっくん… 失恋ソング流したら 益々悲しくなってきた…」 「テメェがそんな曲流すからだろうが!」 そう言っての携帯を手に取ると 亜久津は音楽を止める… すると今度は、外の雨音が聞こえ始める… 「………あっくん」 「…あ?」 「………あっくん」 「何だよ」 「……あーっくん」 「だから何だっつってんだろ」 「呼んだだけ。」 「……………」 「って、言うのは嘘で… …静かになると雨音聞こえとヤなんだもん…」 「……その為だけに俺を巻き込むんじゃねぇ」 「じゃあ独り言でも あの伊武君みたいに呟いてるね」 「やめろ。」 「う〜〜っ…じゃあ何なら良いの?」 「黙って外でも見とけ」 「さっきっから見てるもん……」 チラッと時計を横目で見ると 針はもうすぐ夜の8時を指そうとしていた… 夜と言っても、外は朝から暗かった為 景色はあまり変わりないが… 「もう…夜かぁ…」 朝から亜久津の家に居た… 本当なら今頃 外で嫌々歩く亜久津とデートをしていただろう… 亜久津は外での“デート”などは嫌い 大概の“デート”は家でゆっくりする事が多いのだ… ――しかし流石に、 クリスマスぐらいは外でデートをしたいので は半場、強行手段で 亜久津に外でデートする事を頷かせたのだが… 勿論、この雨ではいくらでも 外でデートする気にはなれない… だからいつもと変わりない 亜久津の部屋で過ごしていた… 「(…クリスマスデート… …したかったなぁ… …って、そろそろ諦めようよ自分…。 ………あ、そーだ…)」 未だ願う無意識の欲求を 自身で諦めさせる為に はある事を考えついた… 「ね、あっくん。」 「…………」 「もしだよ? もし、今降ってる雨が止んで… 今日が終わるまでに この雨が雪に変わったらさ、 一緒に外、散歩しに行こ?」 「………無理だろ。」 突然のからの提案に 雑誌から顔を上げた亜久津だが その内容が叶う確立はあまりにも乏しく すぐに無理だと返す… 「うん。だと思う。 でもそうでもしなきゃ 私が諦めつかないもん。」 今日の降水確率は95%… 雪になる確立は極めて少なく それこそ奇跡でも起こらない限り 雪なんて降らない… ――でも、それでもそれを提案したのは 自分を諦めさせる為… は止む筈の無い空を見上げ その行方を見守った……
何時間経っただろう… かなりの時間空を見上げていた気がする… 流石に首が痛くなるので 休み休み見ていたが… 「(止まなさそう…かな…)」 思った通り、雨は降り続け 時計の針は進み 今は11時ちょっと過ぎになっている… 「(もうちょっとで… 今日が終わっちゃうんだ…)」 そう考えると少し寂しい気持ちになったが 自らが提案したそれが 時間までに叶わなければ スッパリと諦めがつく… 「……あとちょっと…」 「……………」 の小さな呟きに 亜久津は顔を向ける… もう何冊目になるか解らない 雑誌…いや、今はそれも全て読み終え 漫画へと移っているが… それからめを離して 越しに窓の外を見る… 止みそうにない雨… 亜久津はまた漫画へ意識を戻した…
11時56分… あと5分無く25日が終わる… は無理だと思いながら この時間まで見続けた自分自身に 苦笑いを浮かべ 上…空から目線を外し 外の風景を見る… 道路にはいくつもの水溜りが出来ていて 街灯も窓に付いた水によって少しぼやけている… 時折自分の息で窓が白くなる… あと数分で日が変わる風景を はぼぅ…と見つめていた…
しかし、その時である。
雨音が小さくなっていく事には気づいた。
「……え…?」 外の暗さは変わらない… だが先程まで窓に当たってきた 水の音がしない… 道路ではじける水の音も… 屋根に当たる水の音も……
その雨音の代わりに… の目の前… 窓越しに真っ白な…
粉雪が舞い降りた… 「…う……そ…」 一つ…また一つと 小さな白い雪が落ちてくる… 音も無く… の目の前を下へ落ちていく… 「…くん……あっくん!!」 やっと出た言葉に 呼ばれた亜久津はけだるそうに こちらを見て、目を見開いた… 「き…雪!!」 興奮して「雪が降ってる!!」と はしゃぐの姿を 亜久津は驚きの隠せない表情で見る 「凄い凄い!! あっくん!窓の外見える!?雪だよ!? さっきまであんなに雨が降ってたのに こんなに雪が…っ ねぇあっくん!」 「……何度も言うんじゃねぇ。 聞こえてるしさっきから見えてる。」 「あっくん感動足りない!! ……でも…凄い…ホントに降った…」 窓に張り付き 瞳を輝かせて雪を見ているの後ろで 亜久津は立ち上がると の着てきた上着を へと投げる 「ひゃ!! えっなっ何!?」 「何じゃねぇ… テメェが言ったんだろ」 「…え? ………あ…。」
『もしだよ? もし、今降ってる雨が止んで… 今日が終わるまでに この雨が雪に変わったらさ、
一緒に外、散歩しに行こ?』
「え…あ…そっか… 私が…提案したんだっけ…//」 まさか本当に雪が降るとは思っていなかったは 外で亜久津と散歩だなんて 期待などしていなかった… しかもそんな独り言の様な事を 亜久津が覚えていてくれるなど… 「………… (どう…しよう… 嬉し過ぎて…恥ずかしい…っ)」 「おい」 顔を赤くしたまま 無言で居るに 亜久津は声をかける… 呼ばれたははっとした様に 慌てると、少し考え… 遠慮気味に亜久津を見た… 「あっ…あの…さ… 私から提案しといてあれだけど… やっぱり…ここに居る…」 「…行かねぇのかよ」 「あっくんと、部屋で雪見るのもいいかなって…//」 「……………」 の言葉に 亜久津は少しの間固まると 溜息を吐き 先程まで居た位置に腰を下ろした 「……あっくん、行きたかった?」 「どうでも良い。」 「どうでも良い事は普通覚えてないよ♪」 「うるせぇ…」 そう言ってまた漫画を読み始める亜久津に はクスッと笑った… 「(来年は、クリスマス… 晴れ………)」 窓の外を見つめながらそこまで考え、 の思考は停止した… 来年も…こうして 亜久津と共に過ごせるだろうかと… は俯き加減に シンシンと降ってくる雪を見つめながら 静かに不安を口にした… 「…ね、あっくん… 来…年も………」 ―こうして居れるかな…― 最後まで言葉に出来ずに の声は雪の音へと溶けていく… そんなの後ろで 亜久津は一言 同じく返すように言った…
「外は面倒臭ぇんだよ」
「え…」
振り返ったに 亜久津は目線を向ける… 一瞬止まったの思考が… また動き出す。 「……っ… 今回あっくんの要望に答えたんだから 来年は私の要望を聞いてよぉ!」 「外は面倒臭ぇっつってんだろ」 「だーめ! 来年は絶対に外!」 「行かねぇ」 「行くの!」 「行かねぇ」 「絶対連れ出すもんね!!」 「お前じゃ無理だろ。」 「無理でもやるもん!!」
―『外は面倒臭ぇんだよ』― だなんて言ったって…
きっと来年
あっくんは、一緒について来てくれるんだよね? ね、あっくん♪
〜あとがき〜 皆様は亜久津が言った意味…わかりましたか? 解り難くてすみません(汗) その内どこかで公開するか 聞かれたら教えます(笑) う〜ん…あっくんがクリスマスって なんか想像できなくて悩みました(汗) で、悩んで友達にアドバイスもらったりして 書いた結果がこれです☆ いや、ホント助かった… では、皆様もよいクリスマスを…